(5)

「ユウト様、これは……いったい如何いかがなされたのでしょうか?」


 バスルームにやってきたロゼットは、裸のミュゼットとその前で這いつくばる僕を見て顔色を変えた。


「姉さまたち!」

 ロゼットリゼットの二人組に向かってミュゼットが叫んだ。

「この人、ヘンタイなんです。ボクの裸を覗いたんです!」


 姉さまって――?

 あっ!

 そういえばこの三人って血の繋がった姉弟だったんだっけ。


 参ったな。

 だとするとこちらの分が限りなく悪いではないか。

 下手すりゃ本当に覗き魔にされてしまうかもしれない。


「ユウト様!」

 ロゼットの目がきらりと光る。


「は、はいっ」

 

 怒られる!

 僕は思わずその場にビシッと正座し、襟を正した。


 ところが予想外にも――


「大変申し訳ございませんでした」

 と、ロゼットは僕に深々頭を下げた。

「弟の無礼な振る舞い、わたくしが代わりにお詫び申し上げます」


「ええー! ちょっと、ロゼット姉さま!」

 ミュゼットは急いで体にタオルを巻きながら、不満げに口を尖らせた。

「無礼な振る舞いってどういうこと? 覗きをしたのはユウ兄ちゃんなんだよ」


「ミュゼット、少し頭を冷やしなさい」

 ロゼットがミュゼットをにらむ。

「ユウト様がそんなことをするようなお方だと思いますか?」


「それは……違うかも」


「そもそも、ここはユウト様のお部屋。なのにミュゼット、あなたがどうしても水浴びしたいとワガママを言うから、絶対にユウト様のお眠りを妨げないという条件で、男爵様が浴室を使うことを許可されたのです」


「だってしょうがないじゃん。お城の中は逃げてきた兵士であふれかえてるから、ここが一番安全にお風呂入れると思っただもん。まさかその間にユウ兄ちゃんが目を覚ますとは思わなかったしさぁ」


「ならばなおのおこと我慢なさい」

 ロゼットがミュゼットを叱咤する。

「これくらいのこと」


「そうよそうよ! 別に見られて減るもんじゃないしぃ」


 ウフフ、と笑いながら茶々を入れたのはミュゼットのもう一人の姉にして、デュロワ城のメイドナンバー2のリゼットだった。

 この前の晩はリゼットは倒れたアリスに付きっきりだったため、間近で接するのは今日が始めてだ。


 リゼット――

 僕は改めて彼女を見た。


 その容姿はロゼットとミュゼットの二人に負けず劣らず美しい。

 が、メイドにしてはちょっと崩れた部分があるというか、女らしさを前面に押し出している感じがした。


 きちんとメイド帽を身に付け髪をひっ詰めているロゼットと違い、リゼットは赤茶色の長い髪をサラサラさせ、きれいに化粧もしている。

 そしてなにより、メイド服の下に押し込めた胸が今にも爆発しそうなくらい大きいのだ。

 

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