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「な、な、何なんのよ、このとっんでもなくブッサイクでへちゃむくれた怪物は!! しかもデカい!! デカすぎるわ!!」

 ハイオークを見上げ、男爵が目をひん剥いて叫ぶ。


「男爵様~もう分かったからさぁ、ちょっと静かにしててよ」

 ミュゼット振り返って、うんざりしたように言う。


「だってだって、ほんとデカいじゃない!」

 と、男爵のおしゃべりは止まらない。

「いいことミュゼット? デカすぎて嬉しいのは、キルケイ産の生牡蠣かき殿方とのがたのアソコのサイズだけなのよ!!」 


 ……こんな時でも隙あらば下ネタを飛ばす男爵。

 それを聞いたミュゼットは一瞬意味が分からずキョトンとしていたが、すぐに顔をしかめて言い返した。


「アソコのサイズって……ったく、相変わらず下品なオッサンだなあ、男爵様は! もうやんなっちゃう!!」 


「あらミュゼット! 下品だなんて失礼な! アンタにも付いているモノでしょ!」

 男爵もムキーッとなって言い返す。

「それにオッサンって何よ、オッサンって! せめてオバサン――いいえ、おネエさんと呼びなさい!」


 ハイオークという強敵を前にして、何なんだこの喧嘩は……。

 それに、“付いている”って?

 いや、そこはグリモ男爵の一流の冗談か。

 

「もーいい加減にしてよ! この話はここで終わり!!」

 ミュゼットもついに堪忍袋の緒が切れたのか、男爵を怒鳴りつける。

「そんなことより、どーすんのさ? そこのデカい化け物ハイオーク、ボクがやっつけっちゃっていいの?」


「……ううん……そうねぇ」

 

 と、そこで男爵は急に口を濁してしまった。

 表情も曇り気味だ。

 そんな男爵を見て、ミュゼットが畳み掛ける。


「黙っているってことは、魔法を使って戦ってもいいってことだよね? みんなを救うためだから仕方ないよね?」


「……やむを得ないわね」


「へー男爵様、ボクが魔法を使って戦うことに賛成してくれるんだ」

 ミュゼットが皮肉っぽく言う。

「それって初めてのことだよね?」


「……今はしょうがないでしょ!」

 と、男爵は一転して腹立たしげに叫んだ。

「ミュゼットって、ホント嫌な子!」


 グリモ男爵とミュゼット――


 二人は昔からの知り合いで、関係がギクシャクしているのは知っていたけれど、今のやり取りで、その原因の一端を垣間かいま見た気がした


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