第二十四章 油断
(1)
あのやたら強靭でとてつもなく手ごわい敵、ハイオークがまたしても僕たちの眼前に――
リューゴたちの陽動作戦に引っかからず、その上霧の外で待ち伏せまでしているとは、どうやら思った以上に奴の知能は高いようだ。
……いや、感心している場合ではなかった。
それだけ厄介な敵なわけだし、デュロワ城へたどり着くためにはどうしてもこの道を通るしかないのだ。
でも、いったいどうやって戦えばいい?
昨日だって、マティアスと竜騎士、エリック、それに僕とリナが協力し合って、甚大な被害を出しつつようやく倒した相手なのに……。
今の状況と戦力で、真正面からぶつかって奴に勝てるはずはない。
やっぱりこのまま進むのは無理か……。
そう考え直した僕は、横にいるミュゼットに話しかけた。
「あの、ミュゼット様」
「は? ……様?」
「一つ提案があるのですが――」
「いやいやちょっと待ってよ。“様”ってなによ、“様”って」
ミュゼットはそう言って、いきなり笑い出した。
「ハハハ……あのさ、ボクのこと“様”つけて呼ぶ人なんて、たぶんこの世でアンタだけだよ」
「え? どうしてですか」
僕は意外に思って聞き返した。
「あの、失礼ながらミュゼット様は貴族……でしょう? なにしろ
「違うよ。ボクは庶民も庶民、ド庶民の出身」
と、ミュゼットは鼻をこすって言った。
「あのさ、
そうだったのか。
このドサクサで忘れていたけど、そういやグリモ男爵も同じようなことを言ってたっけ。
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