(7)

 こうして恋人同士リナとリューゴはいったん離れ離れになった。


「リナ様、もはや一刻の猶予もありません。どうか気持ちを切り替えてください」

 急に元気を無くしたリナに、僕は言った。


「わかってます、ユウトさん」

 と、リナは無理に笑顔を作る。

「取り残された兵士さんたちを早く助けに行きましょう」


「では打ち合わせ通り、草原に出たら敵の周りに大きく円を描くように馬を走らせて下さい。矢などの飛び道具が僕の『ガード』の魔法で防ぎますが、念のために敵とはある程度の距離を保ってくださいね」


「大丈夫、その点もぬかりありません。――じゃあ、最初から飛ばしますよ!」


 リナは馬にやや強く鞭を入れた。

 すると馬は短くいななき、岩山の影から広い草原に向かって、全速力ギャロップで一気に走り出た。


 前方に見える敵の数はおおよそ1500。

 うちコボルト兵が1000、イーザ騎兵が500という人間と魔物の混合軍だ。

 

 この具体的な数は王の騎士団キングスナイツ斥候せっこうが、おそらく何らかの特殊能力スキルを使い、短時間で割り出したものだ。

 加えて報告では、敵の中に特に注意すべき高レベルの者は見当たらないとのことだった。

 それはつまり、昨日僕たちが戦ったイーザ軍の要注意人物――


 風の魔法使いセフィーゼ。

 その双子の弟の獣使いビーストテイマーセルジュ。

 将軍ジェネラルヘクター。


 以上の三名はこの戦場にはおらず、本隊の騎兵たちと一緒にどこか別の場所へ撤退したことを意味した。


 ――大丈夫だ。あの三人さえいなければ作戦はきっと成功する!


 僕はそう自分い言い聞かせ、猛スピードで走る馬の上から魔法を唱えるタイミングを慎重に見計らう。



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