(5)

「この二人なら必ずや兵士千人に匹敵する働きをしてくれでしょう!」


 と、リューゴが太鼓判を押した。

 王の騎士団キングスナイツの隊長自らが言い切るのだ。よほど自信があるのだろう。


「ありがとう! クロード君もイイ男でホント頼もしいわぁ~」

 グリモ男爵がそう言ってから、ちらりとミュゼットを見た。

「……それとミュゼット、ずいぶん久しぶりね」


 男爵とミュゼット――二人は知り合いだったのか。

 やや冷たい感じの男爵の言葉に対し、ミュゼットもぞんざいに返事をする。


「どーも、グリモ様! グリモ様も相変わらずですね~」


「まーね。ミュゼットも元気そうでよかったわ」


 久々の再会なのにこのそっけなさ。

 どうやら昔、男爵とミュゼットの間に何かわだかまりになるような出来事があったらしい。

 しかし、今はそんなことを追及している時間はない。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「それでは男爵様、マティアス様、作戦を開始します」


 僕は男爵とマティアスに挨拶をし、リナの後ろに騎乗した。

 まず作戦の第一段階だ。

 当たり前だが最初が肝心。ここで僕たちが失敗すれば、すべてがおじゃんになる。


「ではリナ様、手はず通り馬の操縦をお願いします」

 僕は気持ちを引き締め、リナに声をかけた。


 だが――


「わかりました」

 リナはいったんうなずいたものの、一瞬迷ってから僕に言った。

「……ユウトさん、ごめんなさい。少しだけ私に時間を下さい」


「え?」

 

 この期に及んで何を――?

 と、面食らっていると、リナは馬を歩かせ、リューゴの乗る黒馬の近くに寄った。


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