(7)

 ロゼットは極めて端整な顔立ちをした、いかにも有能そうなメイドだった。

 ありとあらゆる所にこだわるグリモ男爵は、お城や庭だけでなく、使用人も超一流の人材を揃えないと気が済まないのだろう。

 

「あのー」

 僕はそんな美しきメイド、ロゼットにこわごわ声をかけた。

「ちょっと前を通して欲しいんですが……」


「これは失礼いたしました」


 ロゼットはかしこまって言った。

 が、ドアの前から一歩も動こうとはしない。


「ユウト様、どこかへお出かけですか?」


「え、ええ、ちょっと。お城の外へ」


「承知いたしました。しかし、その前にご朝食はいかがなさいますか? お部屋にお持ちいたしましょうか? それとも食堂にご用意いたしましょうか?」


「ごめんなさい、食事はいいです! 急いでいるので」


 僕は首を横に振った。

 今はみんなを助けるため少しでも早く戦場に戻らなくてはいけない。

 悠長ゆうちょうに朝ごはんなど食べている時間はないのだ。 


 ところがロゼットはがんとして道を譲らない。


「いいえ、それではユウト様のご健康に差し障ります。それにわたくしは主人グリモ様から、ユウト様を大切なご友人として丁重におもてなしするよう、きつく申し付けらております。ご朝食も出さずにユウト様をお外にお見送りするなどという無礼、到底いたしかねます」


「いや、だから! おもてなしする気があるのなら僕の言う通りにしてください!」


 僕は何とかしてドアの前からどいてもらおうと、必死に叫んだ。

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