(3)
だが、デュロワ城の衛兵はイラつくマティアスの心の内など知るわけもない。
人の神経を逆なでする素っ頓狂な声で「アリス王女!?」と叫んだあと、いきなり笑い出した。
「ハハハハハ! バカ言っちゃいけねえ。王女様が何の用があってこんな田舎の城を訪ねてくるんだよ!」
「な、なにっ! 貴様! 私の言うことが信じられないのか!」
怒りまくるマティアス。
しかし衛兵は一切取り合わない。
「ほざけほざけ! おまえらどうせここらを荒らしまわってる野盗か山賊の
「化けるだと!? そんなわけあるか!!」
「ははーん、分かったぞ。さてはお前らその格好で城内に潜り込んで、このデュロワ城の乗っ取りでも企んでいるんだな? バーカ。そんな見え透いた手に誰が乗るかよ。だいたいロードラントの竜騎士にしちゃあお前ら汚すぎてなあ、まるで落ち武者だぜ。――さあ帰れ帰れ。さもないと番兵をけしかけるぞ! それとも大砲をぶっ放してやろうか?」
どうやら衛兵は、近くでロードラント軍がイーザ軍と交戦したことを知らないらしい。
たぶんこの地が辺境すぎて情報が届いていないのだろう。
「あの、私が話してみましょう」
見兼ねたリナがそう言って前に進み、衛兵に向かって声を張り上げた。
「デュロワ城の衛兵よ! 王女ならここにいます。
「へへぇまいったまいった」
衛兵がうんざり声で言った。
「お前らご丁寧に偽の王女様まで用意したのかよ。おまけにそんな長ったらしい名前まで考えてご苦労なこった!」
……偽の王女。
実はそれで正解。
本物のアリス王女は鎧をかぶったまま、いまだ後ろで気絶しているのだから。
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