(3)

「おっと、ロードラントのボンクラども。手を出すんじゃないよ!」

 ヒルダがドスの利いた声で威嚇いかくする。

「もしそこから動いたら、オマエたち全員を即『アストラル』の中に放り込んでやる。ワタシはユウトの度胸を試したいんだ」


「聞いたかユウト? 殺れ、ユウト、殺れ、殺っちまえ!」


 誇り高き竜騎士とは思えない乱暴で扇動的な声――

 ヒルダの圧倒的な魔法の前に追い詰められ、みんな理性を失いつつあるのだ。


 が、それは僕も同じ。

 頭に血が上って思考はほぼ停止状態、リナを救うため前に突き進むことしか考えられなくなっていた。


 度胸試しか。

 いいだろう、やってやる!


 らなければ、られる。

 リナを救うためにヒルダを殺す。

 ただそれだけのことだ。


 僕はかっと目を見開き――


「うおーーーーーー!!!」


 声にならない雄叫びを上げ、ヒルダに向かって走り出した。

 ショートソードを構え、ヒルダの真っ白な胸を狙う。


 しかし――


「シャノン!!!!」

 ヒルダが大声で叫んだ。


 その刹那、視界に黒い影が入った。

 ヒルダの叫んだ直後、いや、もしかしたらそれより一瞬早く、シャノンが僕の前に飛び込んできたのだ。


「てやっ!」


 シャノンは僕のショートソードを刀でなぎ払い、そして言った。


「ユウト、今きみから本物の殺気を感じた」


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