(4)

 シャノンの鋭い一太刀に僕は大きくよろめいた。

それでもショートソードを落とさずに済んだのは、彼女が相当手加減したからだろう。


 そんな僕とシャノンを見て、ヒルダがしてやったりという感じで叫んだ。


「シャノン、ユウトとようやく戦う気になったか!」


「ヒルダ、あなたという人は!」

 シャノンは刀を構え僕と向き合いながらも、悲鳴に近い声を上げた。

「卑怯よ!」


「ふん、なんとでもほざけ。これはキサマに対する罰でもあるのだ!」

 と、ヒルダが叫ぶ。

「ワタシの命を守るという傭兵としての約定やくじょうか、それともガキは絶対に殺さないというその鉄の信条か――シャノン、キサマがどちらを選択するか、今この場でしかと見極めさせてもらおう!」


 くそっ、ヒルダめ!

 それが狙いだったのか――!!


『アストラル』の魔法で僕を脅し自分を殺すように仕向け、その時シャノンが助けにくるかどうかを試す――


 意地が悪いと言おうか、人の弱点に付け込んだなんとも鬼畜な作戦だ。

 これで僕とシャノンは、お互いどうしても戦わなければならなくなったわけだ。


「シャノン、ユウトを殺せ! もしそれができないのなら裏切りと見なし、この『アストラル』の中に一緒に放り込んでやる」


「ヒルダ、最低っ!!」

 シャノンが叫ぶ。が、額に汗をにじませ表情は苦しい。


 そんなシャノンを見て、僕は思った。

 これまでの言動からして、彼女はたぶん根っからの悪人ではない。

 何か事情があって仕方なくヒルダになんかに仕えているに違いない――と。


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