第十四章 囚われの偽王女

(1)

 それにしてもローブの魔女は、いったいどれだけの数の死体を用意したのだろう?

 アンデッドは地中から際限なく湧いてくる。


「どうだ、ワタシが蘇らせた地下の戦士たちは! なかなかの強さだろう。」

 魔女が満足げに言った。

「だが王女まで危害が及んでは困るな――アリス王女、その身預からせてもらおう!」


 思った通り、魔女の一番の狙いはアリスなのだ!

 僕は焦ってリナの肩をつかんで言った。


「リナ様、このままでは危険です! 私は馬を降りて戦います。どうぞ後方へお逃げください!」


「いいえ、それは認められません。戦うのなら共に!」


「そんな! コボルト兵と戦うのとはわけが違うんですよ!」


 と、押し問答をしていると――

 魔女が杖を振り上げ、また別の魔法を唱えた。


『イビルバインド!』


 途端に杖の先が紫色に点滅し、そこから、ひらひらした帯状の光が伸び出てきた。

 その魔法の帯は、まるで生きているかのようにくねくねと空中を動き、アンデッドや竜騎士の頭上を跳び越え、リナの頭上まで来て止まるとらせん状の輪に形を変えた。

 ちょうど新体操の競技で使うリボンのような感じだ。


「あっ!」


 リナの口から悲鳴が漏れる。

 光の帯は、あれよあれよと言う間に、リナに巻き付き体をキュッと締め上げたのだ。


「捕えた! 王女を捕えたぞ!」


 魔女は杖を、魚のかかった釣竿のようにクイッと引いた。

 光の帯はそれに連動して動き、リナをいとも簡単に空中に持ち上げてしまった。



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