(8)

「シュッ」と音がして、短剣はシャノンの太ももをかすめた。

 服が裂け、紅い鮮血がルビーの玉のようになって宙に飛び散る。


 思わぬ負傷でシャノンは大きくバランスを崩し、一回転してから地面に膝をついて着地した。


 マティアスはすかさず剣を持ってそこへ猛進する。

 力では明らかにシャノンが劣る。

 接近戦の打ち合いになれば、彼女は圧倒的に不利だ。


 いけない!

 と思ったのか――


 シャノンは本能的に、曲げた足をばねにして再び空中にのがれようとした。

 だが、ケガのせいで確実にスピードは落ちていた。


 間に合わない!


「ガキンッ」という乾いた音が静まり返った林の中に響く。

 マティアスの強烈な一撃を、シャノンはもろに刀で受ける羽目になった。


 思わずよろめくシャノン。

 それに対し、マティアスは連打連打連打――


 攻撃し続けてシャノンの空中殺法を封じようというのだ。

 シャノンは刀を両手に持ち歯を食いしばってマティアスの猛攻に耐える。が、すぐに表情に余裕がなくなってきた。


 ただでさえ力の強さには差があるのに、マティアスの剣の威力は『パワー』のスキル効果で倍増している。

 シャノンが守勢に回るのは当前だ。


 自由に動けなければシャノンの強さは九割減。

 これは断然マティアス有利の流れだ。 


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