(6)

「うっ」


 先頭に立つ竜騎士がくぐもった声を上げ、ドサリと馬から落ちた。

 シャノンが空中から黒光りする刀を一突し、その喉元を貫いたのだ。


 そのままストンと地面に着地するシャノン。

 何事もなかったように、ひゅんと剣を振って刃にしたたる血を払う。


 そこへマティアスたちが突進する。

 ――が、それはまさに最悪のタイミングだった。


 シャノンに殺された竜騎士の死体とその馬が、ちょうど進路をふさぐような形に転がっていたからだ。

 おそらくシャノンはそうなることまで計算して、先頭の一騎を殺したのだろう。

 

「避けろ!」


 マティアスが手綱を引き叫ぶ。

 マティアス自身はかろうじて馬の進路を変え、これをかわした。


 だが後から来る二騎の竜騎士は間に合わない。

 馬は勢い余って死体に大きく蹴躓けつまずき、竜騎士ごと前のめりになって地面に転倒してしまった。


 間髪入れず、そこにシャノンが飛び込む。

 そして目にも止まらぬ速さでピュッピュッと軽く刀をなぎ払った。


 一切の容赦がない非情の剣。

 シャノンは倒れて動けない竜騎士二人にとどめをさしたのだ。


「貴様! よくも!」


 が、その隙に、別の竜騎士がシャノンの背後を取った。

 馬上から投げ槍スピアをシャノンの背中目がけて投げつけたうえ、一気に突っ走って剣で切りかかる。


 しかしシャノンにはまだ余裕があった。

 わずかに笑みを浮かべ、竜騎士に背を向けたまま高くジャンプし投げ槍スピアを軽くよけた。

 そのままくるりと背面宙返りをして――

 襲いかかってきた竜騎士の背後を逆に取ってしまったのだ。


 突然、目の前のターゲットが消えて慌てた竜騎士は、首を左右に振りシャノンの姿を探すがどこにも見当たらない。


「遅い! 後ろだ!」


 シャノンは馬の背につま先立ちで立ち、刃をスッと竜騎士の背中に入れた。

 それから軽くジャンプし、音もなく地面に降り立った。


 一方、心臓を一突きされたその竜騎士は、走る馬から落ちることなくそのまま森の中に突っ込み、木に激突してしてようやく止まった。

 


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 たった一人の剣士に、四人の竜騎士が瞬く間に敗れ去った。 

 しかも相手は人外の化け物でもなく、また邪悪な魔法使いでもない。若く美しい女剣士にだ。 


「貴様!」

「許せん!」


 いきどおった残りの竜騎士たちが口々に叫びながら、シャノンを取り囲む。

 圧倒的な力の差を見せつけられながらも、死を覚悟して仲間の仇を討とうというのだ。

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