(15)

「え……え……!?」 

 セフィーゼは何が起きたかわからずキョトンとしている。

「どこ? わたしの『ミストラル』はどこに消えたの?」


「終わった。すべて終わったんだ」


「ユウト、なにしたの? わたしになにしたのよ!!」


「悪いけど君の魔法を封じさせてもらった。しばらくはどんな魔法も使えないよ」


「ウソウソ! わたしの魔法を使えなくすんなんて、あんたどんだけ魔力が高いのよ!!」

 セフィーゼは地面にヘナヘナと座り込み、いきなり大声泣き出した。

「ひどい! ひどいよ!!」


「……セフィーゼ、『ミストラル』の魔法を僕の前で使うのは二度目だよね?」

 泣きじゃくるセフィーゼに、僕は訊いた。


「……え、そんなことない……!?」


「いや、決闘デュエルの前、兵士たちのヤジに怒って『ミストラル』を唱えようとしたじゃないか」


「あっ!!」


「切り札をそんなに雑に見せるから、僕は対策できたんだ。『ミストラル』は威力も大きいけど、それだけ魔力を溜める時間が長い。そこが最大の弱点なんだよね」


「負けたわ……」


 セフィーゼはがっくりと地面に手をついた。

 もう抵抗する気力も残っていなさそうだ。


 それなら――

 と、僕はセフィーゼのそばに行こうとした。


「い、いや!! 来ないで!」

 何かされると思ったのか、セフィーゼは必死にわめく。


「ユウト! 何をするんです! もう我々は降参したではないですか!」

 ヘクターが僕を止めようと叫んだ。


「安心してください。彼女に危害は加えませんから」

 僕はそう断りを入れると、セフィーゼの前まで来て両手を差し出し、それから魔法を唱えた。


『リカバー!!』


 セフィーゼの全身の傷が、たちまち消えていく。

 やはりセフィーゼが、跳ね返った『エアブレード』で負った傷は、大したことなかったのだ。


「え……どうして……? どうして治してくれるの?」

 セフィーゼが涙をぬぐって僕を見上げた。


「別に……」


 自分でも、なんでこうしてしまったかわからない。

 決闘デュエルの約束を反故ほごにしたセフィーゼは、正直、殺されても文句は言えないだろう。


 けれど、こういう戦いの終わり方があってもいい――

 そう思っただけだ。

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