(3)

 しかし――


「やったぞ、ユウト!!」

 アリスが声を上げる。


 こわごわ目を開けると、二人ともまったくの無傷。 

『M《マジック》ガード』の魔法の壁が、見事に『エアブレード』の虹色の風を防いだのだ。


「ユウトがいれば、あんな魔法恐れるに足らず、だな」


 アリスがほほ笑む。

 どうやら魔法を唱えた当の本人より、アリスの方が『マジックガード』の力を信じてくれたらしい。


 一方、セフィーゼは、

「ウソでしょ!? なんでよ! どうしてわたしの風が消えちゃったの!」

 などとキャーキャーわめき立てている。


 あの慌てっぷり。

 ご自慢の『エアブレード』が効かなかったなんて、たぶん初めての経験なのだろう。

 これは幸先いい。

 セフィーゼの出鼻をうまく挫くことができた。


「い、今のは50%の力なんだからね! 今度は80%よ!」


 セフィーゼはすぐに気を取り直し、もう一度指先で虹色の風を作った。

 今度は魔力のためが長い。


 そして――


『エアブレード――!!』


 虹色の風がより大きく波を打ちながら、こっち向かって押し寄せてきた。

 セフィーゼの宣言通り、かなり威力を増している。


「いっけーーーー!!!」

 セフィーゼが絶叫する。


 だが『マジックガード』は、その強力な魔法攻撃でさえものともしなかった。

 虹色の風は魔法の防御壁にぶつかった途端、一瞬で霧散してしまったのだ。

 セフィーゼの叫び声だけが残響となって、からっぽの空に虚しくひびく。


「やだ……どうして……? こんなのあり得ないよ」


 二度も魔法を防がれセフィーゼは、半ば茫然自失状態だ。

 そんなセフィーゼに、険しい顔をしたヘクターが声をかける。


「セフィーゼ、このままでは何度魔法を唱えても無駄ですよ。『エアブレード』はあのユウトという兵士の作り出した魔法の壁には通用しません」


「ゆ、許せない!」 

 プライドを痛く傷つけられ、セフィーゼは顔を真っ赤にして叫んだ。

「ヘクター、まずはあいつをっちゃって!! あなたの刀でユウトの息の根を止めるのよ」


「承知!」

 ヘクターはうなずき、青竜偃月刀せいりゅうえんげつとうを構え、標的を僕に定めて走り出した。


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