(13)

「黙れ! 黙れ!」

 セフィーゼは当然のように激怒した。顔を真っ赤にして、地面を何度も蹴っとばしている。

「それがあんたたちの答えね! いいわ、下っ端だけでも助けてやろう思ったけど、まとめて吹き飛ばしてあげる!」


「セフィーゼ、少し落ち着きなさい」

 と、ヘクターはいさめたが、セフィーゼは耳を貸さない。


「ヘクターは黙ってて。これは団長命令よ!」


 セフィーゼはそう言うと、両手を天に掲げ声を張り上げ叫んだ。


『――風よ、イーザの精霊よ!

     私にさらなる力を――――!!』


 すると、セフィーゼの手のひらの上に小さな虹色のつむじ風が発生し、さらに、


『はぁぁぁぁぁぁーーー!!』

 セフィーゼの小柄な体が緑色のまばゆいオーラに包まれ、魔力が一気に高まった。


 そして風はさらなる風を呼び――

 つむじ風は、セフィーゼの魔力とともに「ゴォーゴォー」と不気味な音を立てながら成長し、ついには巨大な虹の竜巻と化してしまった。


 さかんにヤジを飛ばしていた兵士たちも、その竜巻の迫力に圧倒され、すっかり黙り込んでしまう。


「『ミストラル』の魔法でみんなぐちゃぐちゃになって死ぬか、それともその前に窒息して死ぬか――」

 魔法を完成させたセフィーゼの顔に、悪魔の笑みが浮かぶ。


「本当に楽しみ♡」



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



『ミストラル』


 巨大な虹色の竜巻で敵全体に大ダメージを与える風の上位魔法。

 あの風の渦に巻き込まれたら、それこそひとたまりもないだろう。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「これは厄介だな」

 アリスが舌打ちをして、僕に言った。

「ユウト、私は先に一人で出て行きセフィーゼと話すから、呼んだら来てくれ。最初から二人で行って、奴らに下手に警戒されたくないからな」


 僕は黙ってうなずいた。

 今は、アリスのやろうとしていることを信じるしかない。



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