(12)
「待ってください、アリス様!」
と、そこでリナが引き止めに入った。
「恐ろしい敵、しかも二人を相手にしていったい何をなさるおつもりですか? ――それでも、どうしてもアリス様が行くというのなら私も付いていきます。アリス様を守るのが私の役目なのですから」
「リナ、すまない。気持ちはうれしいが、今はお前に出てこられては困る」
アリスはリナをやんわり払いのけて言った。
「ここは私とユウトに任せてくれ。それに私はあの二人にいきなり喧嘩を吹っ掛けるわけではないぞ。まずは話し合いをしてみたいのだ」
「しかし――しかしあまりに危険すぎます!」
「案ずるな。万が一戦いになった時でもユウトがいる。ユウトの魔法の力はリナも知っているだろう。――さあユウト、行くぞ!」
どうしていいか分からずぼう然とするリナを残し、アリスは兵士たちの全面に出ていった。
僕もリナに「アリス様は私が必ず守ってみせます」と声をかけ、すぐその後に続く。
セフィーゼの提案を聞き、ざわめきが治まらなかった兵士たちも、そこでようやくアリスの存在に気付いた。
「おお、アリス様!」
「アリス様――!」
「みんな、アリス様だぞ!」
アリスの登場に、兵士たちは一瞬わっと湧き立ち、それから急に静かになった。
それから全員が全員、首をきょろきょろ動かし、アリスとセフィーゼの顔を見比べ始めた。
アリスとセフィーゼ――
この先二人のうちどちらに従うのか、品定めをしているのだ。
「さあどうなの? 王女を渡すの、渡さないの? もう待てないよ!」
と、セフィーゼがもう一度叫ぶ。
どうやらセフィーゼは、アリス本人が兵士の中に紛れていることにまだ気づいてないらしい。
すると……。
「バカヤロー!!」
いきなり、兵士の一人がセフィーゼに向かって怒鳴った。
「てめえらなんかにうちの王女様を渡すかよ!」
「そうだそうだ!!!」
別の兵士が同調し、続けて
「この小娘が! 生意気なんだよ!」
「すっこんでろクソガキ!!」
「ロードラントを舐めんよ!! この田舎の蛮族が!!」
「いつか×××して○○○してやるからな、覚悟しとけよ!!」
ありとあらゆる
中には聞くに堪えない、卑猥で下品な言葉も交じってはいたが――
彼らにも迷いはあったのだろう。
でも結局、みんなアリスを選んだのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます