(20)

 だが、この状況で『ガード』の魔法を止め『リカバー』を使えば、二人ともハイオークに殴り殺さてしまう。

 結局、僕たちが助かるには、目の前で暴れるハイオークを倒さなければならないのだ。


 ――じゃあ、いったいどうすればいい?


 ………… 

 ……

 …


 いくら考えても、何も思い浮かばない。

 このままだと、もう――


 エリック、ごめん。

「必ず助ける」なんて簡単に言ったけど、やっぱりダメそうだ。

 僕の魔力が尽きれば、そこで終わりになってしまう。


 ただ一つ心残りなのは――リナのことだ。

 手遅れになる前に、せめて一言「逃げろ!」と言いたかった。


 だが今の僕は、ハイオークのパンチを防ぐのに精いっぱいで、リナの方を振り返る余裕すらない。

 さっき目に刻んだリナの姿――

 馬を颯爽さっそうと乗りこなし、ボウガンを撃つ彼女の姿だけが脳裏に浮かぶ。


 ――ん?


 リナとボウガン、そして矢。

 そういえば、リナは射撃が得意だったっけ……。


 いや――

 

 待てよ!

 そうだ、その手があった!! 


 天啓てんけいの如く、とでも言うのだろうか?

 リナのおかげで、僕はある魔法のことをパッと思い出した。


 が、“その手”を使うにしても、いったんは『ガード』を唱えるのを止めなければならない。


 ――よし、ここは逆に!


 僕は『ガード』の力を高めるため、魔力の出力をさらに上げた。

 それに比例するかのように脈拍が速くなり、激しい耳鳴りが始まった。

 体温も急激に上がった気がする。

 まるで全身の血が沸騰するような感じだ。


 今の自分完全にオーバーヒート状態。

 だが、たとえ体が壊れてしまっても、ここで魔法を中断するわけにはいかない。

 みんなが生きて帰れるかどうか、すべて僕の肩にかかっているのだから。 


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