(6)

 そして、ハイオークの巨体がいよいよ近づき、コボルト兵たちの攻撃もいっそう激しさを増す中――


 ついに、竜騎士に最初の犠牲者が出た。

 先頭を走っていた一騎が、いきなり馬ごと地面に倒れ込んだのだ。

 コボルト兵の投げたハンドアックスが、竜騎士の乗る馬の脚を直撃したらしい。


 勢いに乗ったコボルト兵が馬に攻撃を集中させ始める。

 続けざまに別の一騎が落馬し、さらにもう一騎がやられてしまう。


 そこへマティアスの怒声が飛んだ。


「脱落した者に構うな!! とにかく先へ急げ!!」


 僕は一瞬、非情すぎる、と感じてしまったが――しかしそれは指揮官としてやむを得ない判断なのだろう。

 ここで仲間を助けるため足踏みすれば犠牲はさらに増えるし、逆にハイオークを少しでも早く倒せば、落馬した竜騎士を救える可能性は高くなるからだ。

 

 後で必ず助けるから、その時まで何とか持ちこたえてくれ――

 彼らに対し、今はそう願うしかなかった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 コボルト兵の執拗しつような攻撃により、さらに数人の脱落者を出し――

 僕たちはようやく、ハイオークの元へたどりついた。


「うへえ、でっけえな!!」

 エリックがハイオークを見上げ叫ぶ。


 確かに、ハイオークは想像をはるかに超える巨人だった。

 身の丈は7メートル以上あるだろうか、鬼のような恐ろしい顔に、灰色の暗い目。全身ごつごつした黒い皮膚に覆われている。

 さらに体には頑丈そうな鋼鉄の鎧を身に付け、両手に巨大な鉄球付きの戦斧を持っていた。


 こんな化け物、本当に倒せるのか――?


 恐怖と緊張で、僕の心臓はバクバクと鼓動する。 

 


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