(2)
だが、ほっとしている暇などなかった。
矢の攻撃範囲がどんどん広まってきたのだ。
このままではリナとアリスが危ない。
「アリス様! とりあえず向こうに見える林の影へ! ――リナ、頼む。アリス様をお守りするのだ!」
レーモンが必死に叫ぶが、下手に動けるような状況ではない。
現に、また十数本の矢がこちらに向かって飛んできた。
「危ない――!!」
レーモンもその矢に気づいた。
即座に腰の剣を抜き「むっ」とうなる。
それから矢が落下してくるタイミングを見定め、すさまじい速さで剣を振ると――
「パキパキッ」と音がし、矢が次々と地面に落ちていった。
す、すごい……!
僕はあっけにとられた。
猛スピードで飛ぶ矢を空中で、しかも剣一本で払い落してしまうなんて神業としか言いようがない。
この人、年齢に似合わないとんでもない能力を持っているのだ。
「リナ、何をしている! 早くしろ!」
レーモンが矢を防ぎつつ怒鳴る。
「は、はい! さあ、アリス様、こちらへ」
リナは、アリスの手を引いて逃げようとした。
が、アリスは矢なんてへっちゃら、という顔をして言った。
「リナ、私に構うな。自分の身ぐらい自分で守れる。――おい誰か馬を引け。私が指揮して皆を救うぞ!」
「お、お待ちください!」
それを聞いたレーモンが、アリスを慌てて止めに入る。
「ここでアリス様の身に何かあったら、取り返しがつきません!」
「うるさい! 自分の身は自分で守れると言っているではないか! それに今の私にはユウトという強力な魔法使いがついていてくれる――」
と、そこまで言って、アリスが何かに気づき、僕に向かって叫んだ
「――おい、ユウト。危ないぞ!! 上だ。右上だ!!」
え!?
アリスにそう言われ、右の空を見上げると――
上空からに矢が迫っていた。
しかも数えきれないくらい本数が。
こんなの絶対に避けきれない。
――だめだ、やられる!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます