(7)
「いい? よく聞いて。このスマホは現実世界と異世界をつなぐ唯一の通信システム。その端末になってるの。ゲーム的に言えば、最重要のキーアイテムと言ったところね。これをあなたと一緒に向こうへ送る」
「これを?」
試しにスマホの電源を入れてみる。
スマホはほんの数秒で立ち上がり、パネルにいくつかのアイコンが表示された。
「それは私の父の会社で開発した特殊なもので、とても頑丈にできてるの。それにバッテリーもかなり持つと思う」
なんの
「だけどね、もし万が一そのスマホが壊れたり、バッテリー切れを起こしたりして使えなくなったらその時は――」
セリカの目がきらりと光る。
「現実世界に戻ってこられなくなってしまう。これが四つめの注意点」
「え……」
「だからくれぐれも大事に扱ってね。それとバッテリーがなくなりそうになったら必ず私に連絡をして。向こうの世界では充電なんかできないから、いったんこっちに戻ってこなきゃならないの」
「じゃあ、それは?」
僕は超小型ヘッドセットと携帯型充電器を指さした。
「ヘッドセットはおまけ。上手く使えば誰にも見つからないで私と連絡を取れると思う。そのモバイルバッテリーは、スマホを二回程度フル充電できる仕様になってるわ。でもあくまで非常手段と考えて」
セリカはその二つも僕に渡した。
「さあこれで説明は終わり。どう? ここまで聞いて、わからない点はあった?」
「いや、特にないよ。むしろ早く行ってみたい」
「いい心構えね」
セリカはまたニッコリとした。
それは屈託のない愛らしい笑顔にも見えたが――
いま思えば、あれは、悪魔の微笑みだったのかもしれない。
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