第14話 特典映像って最後に観ない?
仮想敵はチート持ちの獣寄り獣人か……難易度が高過ぎる気がする。だが目標は高い方が低い場合と比べ最終的な着地点が高くなるって聞くし強くなるに越したことはない。
お昼までにはまだ時間がある。
まだ観ていない特典映像を観とくべきか。
「ねぇソラ、なんで特殊な力を持ってる可能性が高いって分かったの?」
ティアナが服の裾を引っ張って聞いてきた。
「チートって言ってただろ? 反則的に強いとかの意味で使ったりする言葉でさ、同郷からの転生者みたいだし転生の際に何らかの力を得ての発言だと思うんだよね。俺の場合だと【次回予告】かな」
「だったらあんまり気にすることじゃないんだね」
「待ってソラ君……今、転生者って言ったわよね。
どういうことかしら? 召喚されたのは三人だったはずよね」
俺の【次回予告】はハズレっぽいからコレを基準にするのはダメだと思うんだけど……。
転生者かもって言わなかったっけ? ダイゴさんもいたし言わなかったわ、そういえば。
「転生者は生まれ変わりみたいなモノで、
前世の記憶を思い出すパターンもあるけど、この場合は違うはず。
「ダイゴの感覚は正しかったのだな」
「魂が……だとすると精神もその転生者のモノなのかしら?」
精神? 何を言っているんだろう。
認識にズレがある気がするけど、分からない。
「生物は肉体と精神と魂魄から構成されているの。
ソラ君が言っているのはその三要素の内、精神と魂魄が転生者のモノに変わったということかしら」
こっちの考えてることが分かる相手ってこういう時は便利だね。
たぶんそれで合ってると思うので頷いておいた。
さっきから頷いてばっかりな気がする。
「……儀式によってある意味肉体のみ生きてる状態だったわね。魂魄と精神が亡くなったティガ君の体に別の魂魄と精神が? ありえるのかしら……」
「神とかの力で転生したとか?」
よくあるパターンだよな。小説とかでだけど。
「それは考えにくいのよ。神様は世界に多大なる影響を与えるような干渉はしないとされているの。
あっても加護を与えるか神の名を騙るモノに天罰を下すくらいね」
「なら、まともじゃない神とか」
神がそもそも、まともかは置いとくがな。
「邪神……大概の悪影響を及ぼす邪神は討伐か封印されてるはずだけど。いえ、深く考えるのはよした方が良いわね」
悪影響を及ばさない邪神がいるようにも聞こえるんですが……。
最悪邪神を相手にすることにな……る……ダメだそんなこと考えてたら現実になる。いや、もう手遅れかもしれない。たぶんフラグ立ったとか言うんだろうなこういう時って……。
「とりあえず、特殊能力持ちの想定でマシヴさん達と相談することにしましょ。
お昼までにはまだ時間があるわね。アナタ、釣りに行きたいなら残りの仕事を片付けてからよ」
「お母さん、私は?」
「ティアナは先週出した、明日までの課題は終わったのかしら?」
「……明後日だと思ってた」
「お昼までに終わらせなさい。ソラ君は悪いけど、ティアナがサボらないよう見ててちょうだい」
「分かりました」
テンションの下がったティアナに付いて行き、朝起きた部屋に戻る。
本当にティアナの部屋だったのか……何で俺、この部屋で介抱されてたんだ。年頃の娘の部屋だぞ。
年頃の……娘? 俺、今女の子部屋で二人っきりじゃねぇか! ヤバイ、緊張して……こないな。
「ソラはベットにでも座ってて。あ! もし暇だって言うなら私の代わりに課題やってもいいんだよ」
「いや、課題は自分でやらなきゃ意味ないだろう。
俺はその間に、まだ観てない『特典映像』を確認してるよ。閲覧制限あるからちょうどいいし。
課題を早く終わらせて、余った時間で遊ぼうぜ」
最後の一言がティアナのやる気を引き出したようで、即座に課題を片付け始めた。
俺はベットに腰掛け、【次回予告】スキルを表示して『特典映像(暇神連合より)』を選択する。
ファンファーレのような音楽が鳴り響き、少年にも少女にも見える中性的な容姿の人物が映る。
「気になる?」「気になる!」「きにな〜る」
一言一言声色を少女、少年、棒読みに変え、ポーズを決める。カメラアングルを変えながら。
「そう! 僕こそは、暇神連合が一柱!
好奇神キーナ・ルーだよ!」
悪戯を企んでいるような表情を浮かべ、名乗りをあげたのは神だった。性別は女らしい。
『好奇神キーナ・ルー(女)』と下の方に名前が表示されていた。
「あー! ちょっとテロップに性別入れないでって言ったじゃん! これじゃ好奇心を煽れないじゃんか、どうするんだよー。え? 余計な手間を省いたって? 僕的に大事なことなのに〜」
誰もいない方を向いて喋っている……誰かいるんだろうか。
「あ、君映ってないじゃん。これだと僕一人で喋ってるみたいになるじゃんか、えい!」
するとキーナの喋りかける方向に、丸眼鏡に三つ編みの文学少女が現れた。
しかし、恥ずかしがり屋なのか即座に持っていた本で顔を隠し映らない位置へと走り去って行った。
「何で映らないのさモジヨムン……丸眼鏡はプライベート? あ、そう。まぁいいや」
走り去った彼女が加護をくれた字解神モジヨムンらしい。ザ・図書委員ってイメージの神だな。
会話しているようだがキーナの声しか聞こえてこない。たぶんキーナ以外の音声はカットされているのだろう。
「でわでわ気を取り直して、やぁ! 異世界から来た……異世界から来た……(ねぇ、彼の名前なんだたっけ? え、知らない? 何でさ? 異世界の文字の方が気になるからって……なら仕方ないね。)おほん、異世界から来た少年! 僕はキーナ、この世界『
神ではなくデミゴッドらしい。
違いが分からん。デミゴッドなんてカードゲームか何かの種族名で見たってくらいだ。
途中小声で俺の名前を確認しようとしてるの聞こえたけど、もう少し準備してから収録すればいいのにな。
「『特典映像』って言葉に惹かれてコレを観ている君に色々教えてあげよう。きっと気になって一番最初に観てるだろうからね! 特別さ!」
一番最後に観てるんだけど……。
好物とかのお楽しみは最後にとっとくタイプなんだよ俺は。
「こっちのデミゴッドは君たちの世界のと微妙に定義が違うんだ。(だったよね?)神格を持つ存在の中で一番神格が低い存在で、唯一世界への干渉が許される存在さ。だからこうして君に『特典映像』を送りつけられるのさ」
デミゴッドの情報はどうでもいい。もっとマシな情報はないのか。
それと、小声で確認するくらいなら分かってる奴に話させろよ。
「え、何? デミゴッドの定義とかどうでもいいって? いやいや僕達のことだよ大事じゃない?
もう、分かったよ。ちぇ、三界の人だと神様事情よく知らないから興味を惹けるし異世界人もきっと知りたいはずなのに〜」
キーナ的に鉄板ネタだったみたいだ。
一瞬俺の反応を読み取ったかと思ったが、こちらからは見えない誰かと会話しているだけだった。
「ヨムンがうるさいので無駄話は終わり!
召喚されたのは君を含めて三人。
だから君になんとかコンタクトを取ろうと思ってたらちょうどいいスキルを持ったみたいだし、君が目覚める前に大慌てでこの『特典映像』を作ってるのさ。
召喚の手掛かりが欲しかったら、大空域へ行くといいさ。行き方は……ヒ・ミ・ツって、うゎ、なにするのさ! あ、ちょ……」
キーナがウインクしたところで映像が乱れる。
正直「ヒ・ミ・ツ」のとこでイラッとしたので、ちょっとスカッとした。
「キーナ、無駄話多い。ウインク、イラッとした。
だから、ちょっと早い。けど、ヨムの番。
フフフ、無駄。キーナの声、オフにした。
届かない、だから黙る」
映像の乱れが戻るとキーナの代わりに、三つ編み眼鏡の文学少女? モジヨムンがいた。
おそらくキーナがいるであろう方向にたぶんドヤ顔をしている。表情の変化が小さいな……。
アンダーフレームの眼鏡に付いた『面会用』と書かれた紙を取ってからやれよ。
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