懐かしき失恋
そういえば失恋の話をまだ書いていない。
相手は、定時制高校に1年だけ行った時に知り合った美少女だ。
私は高校を3年の時退学したので、大学に入る前、高校の卒業資格を得るため、1年だけ定時制高校に通った。
その時、隣のクラスにいたのが美少女Sさんで、背はやや低め、確か岩手県出身で、色白の女の子だった。
Sさんは、どういう仕組みになっているのか未だに分からないのだが、簡単に言うと看護婦の卵だった。
まあ、それで今風に言えば、彼女に告白する男が何人もいて、皆振られてしまうというわけなのだった。
どうして岩手県から東京に来たのか、なぜ看護婦になろうとして定時制高校に通っていたのか、あの若さで親元を離れてどうやって生活していたのか、今にして考えると分からないことばかりだ。
Sさんはとても冷たい印象があった。
親とうまくいってたら、あんな冷たい印象を人に与えはしないのではないか、と今にして思う。
そうそう、そして定時制は、服装は自由で、皆私服なのに、Sさんは頑なにセーラー服を着続けた。
まあ、そういう女子だった。
男子の中では、私はSさんとは仲のいいほうだった。何度かSさん含め、数人で喫茶店に行ったり、ファミレスに行ったりしたこともある。
Sさんは演劇部だったが、私は野球部で、その年たまたま定時制高校野球の全国大会に出て、神宮球場で試合をしたが、その時も応援に来てくれた。勿論私服で。
試合は1回戦で負け。
ピッチャーは、初速130キロくらいの球を投げる、定時制としては好投手だったが、デカい神宮球場に圧倒され、緊張してフォアボールを連発したのだ。
結局それが最後まで響いた。
で、Sさんである。
卒業してから、私はやっぱりSさんのことが好きだった、彼女が忘れられない、そういう想いに支配されるようになり、電話をしてみた。
卒業してから2ヶ月が過ぎていた。
話したいことがある。2人で会ってもらえないか。
そう言った私を、彼女は頑なに拒否し、今付き合っている人がいるから2人で会うわけにいかない、ごめんなさい、と言った。
付き合っている人がいるなら仕方がない、私は彼女に会うこともできないまま、忘れるしかなくなってしまった。
大学生活に埋没して、次第に私は彼女を忘れていった、というわけだ。
恥ずかしい失恋の話を披露してしまった。
今彼女はどうしているだろう。
もう、いい年のおばさまだ。
もう、会いたいとは思わない。
思い出の中の、美しい彼女を大切にしよう。
今幸せになっていることを願って。
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