亡き父へ



お父さんが亡くなって、16年以上が過ぎました。

随分早く亡くなったね。

お盆も近いし、ふと、お父さんに手紙をしたためたくなりました。


今更だけど、色んなところへ連れて行ってくれてありがとう。

特に子供の頃は、釣りだけでなく、映画館だの、相撲見物だの、随分色々連れて行ってくれたね。


プロレスやキックボクシングにも連れて行ってくれて、ジャイアント馬場も見られたし、沢村忠と握手もできました。


随分怒鳴られたこともあったけど、お父さんは本当に子煩悩でした。

だから私も、お金がない割には、子供には随分色々としてやることができた。彼はひとりっ子だったし。


その拓哉も、来年は大学を卒業します。

こんな時期に本当に幸いに、一応就職も決まったので、頑張って生きて行ってくれればと思います。


色々な事があって、私が大人になってからはお父さんと分かり合えなかったけど、所詮親子はそんなものかもしれません。

むしろ、かわいがって育ててくれた事を本当に感謝しています。


最後にキャチボールした時のこと、覚えていますか?


お父さんもすっかり衰えていたけど、

「投げたいかい?」

と言って、腰を下げて、キャッチャーになって僕の球を受けてくれたね。

あの場所は、今は綺麗な公園になって、子供たちの遊び場になっています。


お父さん、私ももう随分歳をとりました。

なんとか妻に、ちょっとでもいい生活をさせてやりたかったけど、いつもキツキツで、叶いそうにありません。


老後も、贅沢のひとつもできないかもしれないけど、何とか妻のあとに死にたい。


僕が死ぬと、僕の遺族年金だけでは妻は生活できないからです。


お父さんとは相性の良くない妻だったけどね。僕にとっては大切な妻なのです。


お父さん、今年は墓参り行くからね。色々本当にありがとうね。


お墓で、また会おうね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る