5月の想い
いい季節になってきた。
妻がスーパーに買い出しに行くというので車を出したが、家の窓から見える風景だけでなく、スーパーへの、車で1、2分の道のりも、木々の葉が青々と繁り、5月の爽やかな風と陽射しにあおられて、風景そのものがキラキラと光っているように見える。
ひと月ほど前、近くの野原に妻とミツバを摘みに行った時は、まだ冬枯れた木が多くあったのに、あっという間に外の光景は変わってしまった。
スーパーの中の妻を待つ間、ふと、近くの花屋さんを覗いてみた。ある作家さまが花屋さんでアルバイトされていた頃の話を連載されていて、これがとても面白い。それを少し思い出したせいもあった。
花屋さんの中は色とりどりの花が咲き乱れ、まさに百花繚乱であった。
私はウキウキした気持ちになった。と、店の中には客として2人の少女がいた。
マスクをしているのでよく分からないが、2人とも中学生くらいで、背が高く、ショートパンツを履いていた。
私は、ますます心が明るくなるのを感じた。
昔、ルキノ・ビスコンティ監督が、晩年のマーラーをモデルにして撮った『ベニスに死す』という映画が人気を博したことがあったが、私はその主人公の気持ちが、今ならはっきりと分かるような気がした。
もっとも、映画の中の主人公が追い求める対象は美少年だから、私はちょっと違って通俗の域を出ないが、店の中で花に囲まれている少女たちがまぶしくて仕方がなかった。
しかしジロジロ見るわけにいかないので、すぐ車に戻る。
『ベニスに死す』を思い出しながら思った。
老いるということは嫌な事だ。
反対に若いという事は素晴らしい。
そんな当たり前の事を痛切に感じた。
そんな事は、若い人でも分かるが、しかし今の私は、若い時にはわからなかった何かが同時に分かる。
それは、若い時に思う存分若さを満喫しなかった事の惜しさとでも言おうか・・・・。
まあ、仕方がない。今さら。
家に帰ったら、その映画の主題曲になったマーラーの曲でも聴こうと思う。
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