帰宅の道すがら



 自分が何を求めているのか分からなかった。

 お前は女を求めているのか? 綺麗な女と寝られればそれで満足なのか?

 そう自問してみる。しかしどうやらそうではなさそうなのだ。

 では何を求めているのか? この空虚さは一体なんなのだ?

 仕事の帰りである。電車に揺られながら、私は自分の空虚な気持ちが、どうすれば満たされるのかどうしてもわからなかった。

 こんな感覚は久しぶりだ。虚しさや寂しさとは久しく縁がなかった。

 駅で降りると、私は何度か行ったことのある居酒屋に入ってみる。生ビールを注文し、もつの煮込みと、鳥焼きを注文する。

 ずんぐりむっくりとしたホールの女の子が、間もなく生ビールともつ煮を運んで来る。

 生ビールをのどに流し込み、もつ煮を頬ばり、すぐにまたきた鳥焼きをかじる。

 まだ心の隙間には、具体的な対象がみつからない。

 何をすれば満たされるのか?

 どうすれば満足なのか?

 飲んでも、飲んでも、それは分からなかった。

 小遣いは少ないから、程々のところで居酒屋を出る。

 私は夜の街をさまよう。

 ネオンに照らされた自分の影だけが従順についてくる。

 もう店に入る金もない。だからといってコーヒーなど飲んでも仕方がない。

 結局私にできることはこれしかない。

 そう思いながらスマホを開く。

 そしてバス停で、バスを待ちながら打ち始める。

 

 自分が何を求めているのか分からなかった・・・

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