魔王討伐に失敗した僕たちは、始まりの村からやり直すらしい。

昨咲く

第1話 プロローグ

 彼女は誰だろう?


 キレイな髪をしている。


 なんで怒っているのだろう?


 彼女は男に掴みかかっているんだもの、物凄く怒ってるんだとう思う。


 それと--。


 何故か少し、悲しいのかなと、その横顔に思ってしまった。

 なのに……。




 目を覚ました時、僕は死んでいた。

 何を言っているんだか僕には分からないけど、神がそう言ったのだから、きっとそうなのだろう。騙し取るものなんて何もないのだから、きっとそうだ。


 それに死んでいるのは本当だと思う。

 棺桶に入れられた僕の体はピクリとも動かないし、青白い。

 何故か視界が宙に浮いていて、棺桶だけは透視できるようだけど、嬉しくはない。

 これが、幽霊というやつなのかな?

 残念ながら鏡にも、誰かの瞳にも映らないから、僕が幽霊だと自分でも確認のしようがない。


 それと、神様。

 これはあまり信じていないけど、信じる事にしている。

 理由はまあそのうち分かるよ。きっと。


 そんな神様だけど、今日も教会で僕らを引き連れて(棺桶な物理的意味で)クダを巻いている。

 と言うかクレーマーだね。

 あ、キレた。神官様が。

 これで何人目だろう。この教会を辞めて行く神官様は。


「神は死んだ--」

 ペッ、と唾を吐き出し去っていく神官様。

 みんなこのフレーズを残していなくなるけど、大好きなのかなぁ。それとも教会界隈では流行ってるのかな?


 最初の神官様もそうだったなぁ。

 流行の発信源だったのかな、彼は。

 そんな事を思い、僕は僕の記憶の始まりを思い出す--。


「おお神よ。死んでしまうとは情けない」

 そう確か、初めて聞いた言葉はそれだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る