羽を持つ者達
あるたいら
1.
この世には、大まかに分けて2種類の人間がいる。
成功する人間と、そうでない人間。
俺は間違いなく後者だ。
ひ弱そうな見た目、だらしない格好、大したことない学力。「得意なことは?」と聞かれてもこれと言って得意なことはないから押し黙るしかない。
でもプライドだけはいっちょ前で、「何かあれば」「きっかけがあれば」なんて妄想でしかない事をただただ頭の中に描いている。
いっそ、鳥にでもなれれば……。
俺は自分の部屋のベットから転げ、落ち。
小説や漫画を漁ろうと、久々に部屋の端に置いてある本棚に目を向けた。
「折れないメンタル」「成功する人間の秘訣」「成功秘話」
中学生の頃、まだ何かが変われたはずの俺は特に行動もせずこんな本ばっかり読んでたっけ………。今は読みすらしないけど。
そしてすぐ隣の漫画のラックに目を向ける。
「異世界転生したら平凡な俺が〜〜」
「転生して楽々〜〜」
きっと、俺と同じような境遇の人間が
「唯一持った特技」を活かして書いたものなのだろう。
こういう作品のジャンルはあんまり知らなかったけど、友人に教え込まれてからは自分でもビックリするくらいハマった。
が、どれも「平凡/平凡以下の俺が異世界に行ったら大成功」のものばかり。
きっとそういう人間は「成功する資質があったが現実世界でチャンスがなかっただけ」で
俺みたいに資質のない人間が異世界に行っても何も変わらないだろう。
それでも、異世界に行けるなら……希望を持たずにはいられない。
「やべ、明日の講義の小テスト勉強してねぇ」
やっとこさ重い腰を持ち上げて机に向かう。
「スピリチュアルな心の痛み」「人間と神」
なんか心をえぐる内容だ……。
机の上に飾ってあるホコリまみれの「過去の栄光」を眺めて目を瞑る。
「…………どこで間違えたんだろうな…」
一つあくびをして……深い……意識の中へ………。あぁ……だから俺はダメなんだよ…。
眠ってはだめだとは思いつつ、抗えない意識の喪失に身を委ねた。
「………はっ?!」
ジャーキング、いわゆる寝ピクで目を覚ます。
………が、どうも身を委ねた机が冷たく……なにより臭すぎる。
二度寝を要求する意識に今度こそ抗い、目をしっかり開けると……そこは………。
石畳、苔むした部屋、甲冑の兵士と光る魔法陣………。
「おい…おいおいおい!まさかチャンスが欲しいとは思っていたが!?異世界転移?!俺が?!」
現実とは思えない現実、そうだ…そうだよ!
人生、何が起こるかわからない!ここから努力すればきっと!俺だって!
ここで、俺は一つ勘違いをしていた。
「~~~~~~?~~。~~~~~~。」
何を言っているかわからない…言語自動翻訳スキルは鉄板だろ…!
と、頭の中で愚痴をこぼした瞬間。
『~~~~!』
と、異世界人の詠唱のようなものと共に、脳を焼き尽くすような痛みが襲ってきた。
「ああぁあああぁぁあッ?!あああぁあっぐぁぁあぁああッッ!!!」
身をよじらせ、床を這いつくばり、吐き気と異常な疲労感、目が飛び出すかと思うような痛みに混乱する。
「なに…を…………」
「うむ、これで言葉が通じるのだな?」
「ハッ、作用でございます。」
一番偉そうなやつがこっちを向き、見下すように話しかける。
「悪いが、人手が足りなくてな。異世界より参上してもらった。名を聞かせて貰おう」
「ふざけるな!何なんだいきなり!」
恐らく、今受けた魔法は脳に無理やり言語能力を焼き付ける魔法か何かだろうか。親切心か何かか知らないが、いきなり召喚されて同意もなくあんな痛みをぶつけられれば切れもする。
すると、鋭いような…しなる音と共に激痛が体に走る。
「ぅうあッ!」
見ると、側近の甲冑が手に鞭を持っている。
あれで…叩かれたのか………?
偉そうなデブが続けて話す
「名前を、聞こうか」
しかし、痛みの連続によってまともに受け答えができない。
するとすぐさま、またあの痛みが…今度は頬に走った。
「ーーーッ!」
殴られたあと特有の耳鳴り…顎のズレたような感覚……そしてこれは…。
頬の皮膚が………ッ!
涙目になり、混乱しながらも
痛みに怯え、急いで話す
「
「ソラ、ね。ふむ。」
デブは何事もなかったかのように話をすすめる。
「では、ソラ。君は今から私の奴隷になる。君はもう、人間じゃないことを理解しておくように。既に、奴隷紋は刻んである。君が来たとき、既にね。」
1.奴隷
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