社畜騎士と2つの国家の物語

マンガン乾電池(単一)

第一章 冴えない騎士

第一章 一節 酒場での一幕

夜になり、大人達が騒ぎ始めた街。

そんな街の街角にある酒場で男は一人、酒を飲んでいた。

男は黒髪で中位の身長をしていて、顔立ちこそ整っているものの冴えないという印象を与えられる人物だった。ただ一つだけ特徴があるとしたら、それは赤黒い目だろう。だが唯一異色を放つその目も今は死んだ目と化している。

なぜ、この男がこんな目をしているのかというと…

「またあなたはそんな顔をしているのですか。もう少し明るい顔をする努力をした方が良いと思いますが。」

と、男が今日あった自分の苦労を思い出そうとしたところで、老年の男性が話しかけてくる。その言葉に男が反応し、自分に話しかけてきたのが誰なのかを確認すると男はこう言った。

「あぁ、なんだおっちゃんか。いいじゃないですか、仕事終わりに一人で飲んでる時くらい。」

男にこう反論され、老年の男性は少々ムッとし、さらにこう反論した。

「それが毎日だから言ってるのです。それに少しは仕事場の仲間と飲みにきたらどうでしょうか。」

「まあ、それもそうなんですけど…。あいつらと飲みに来たら碌なこと起きませんよ?リリカぐらいなら大丈夫でしょうけど。」

「それならそれで私は一向に構いませんがね。」

「マジですか。あいつら大分騒がしいですけよ?」

「えぇ。それも承知の上です。ここまで歳を取ると、様々な客を見ることも数少ない楽しみの一つになってきますから。あなたも歳を取ればわかってくるはずです。」

「いや俺は歳取る気はありませんよ…。昇進のためには不老性の獲得は絶対何ですから。」

不老性、それはこの世界において何か一つの分野を一定のラインまで極めることで獲得できる、文字通り歳を取らなくなるじょうたいのことだ。

「はぁ。まあ、わかりましたよ。今度気が向いたら連れてきます。」

と、老年の男性の押しに負けて、男は渋々承諾する。この男からしたら、それでは一日中騒がしくなるだけなので、あまり好ましくないのだが。

こんな感じで、二人の夜は更けていくのだった。


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