第39話 エルフ、質問される。
「……えっ?」
南さんのいきなりのコスプレイヤーになりたい発言に驚きを隠せない俺。
まさか、南さんがコスプレイヤーを目指しているとは……。
「一応聞くけど、理由とかあるの?」
「えっ、ええ。私、小さい頃からアニメに出てくる女の子が好きだったの」
「えっ?」
「ち、違うわよ!別に変な意味じゃないわ!憧れてたっていえばいいのかしら?たまに出てくる可愛いらしい姿、そして時には一生懸命に頑張ってる姿。ヒロインっていう立場で頑張ってる子もいれば、主人公として頑張っている子もいる。
私にはそんな映像がキラキラと輝いて見えたわ。
だから『私もなりたい』って思ったの。それが私の中で一番叶えられると思ったのが、このコスプレイヤーだと思ったのよ」
「そうだったんだ」
南さんにはしっかりと叶えたい理由があるんだ。コスプレイヤーになりたい夢が。
だがしかし、待って欲しい。別にこの髪そしてこの長い耳は決してコスプレをしてるわけではない。ちょっと前に朝起きたらこの姿になってしまっただけであって……
でもこんなしっかり相談してくれた南さんに「実はこれはコスプレじゃないんです。それじゃ」で終わらせたらただ最悪な奴だし、どういう返しが一番いいんだ!?
とっ、慌てていると、公園の外からよく耳にする声が聞こえた。
「あ、エル見つけたわよ!」
「エルくんなんで先帰っちゃうの?待ってたのに!」
その声の主はもちろん姉たちだ。てか、あんたら待ってたというより、入学式の間爆睡してましたよねー?
「ああーごめん、姉さんたちが迎えにきちゃったから私行くね!」
「えっ、うん……」
「えっと、また今度ぉ?じゃ!」
「って、ちょっと私の質問は……」
「これ自家製!じゃあホントにいくね!」
俺はこの状況から抜け出すべく、姉さんたちの車にかけ乗った。そして車は発進した。
「ふぅ」
「なんか疲れてるねエルくん?」
「ああ、ちょっとね……」
「さっき一緒にいた女の子のこと?」
「まあ、そんなとこ」
「ふーん。口説いてたの?」
「それは話が少し変わってくるぞ!?将来の夢の相談受けてただけだよ。まあ、もう会うことはないしこの話はやめにしよう!ね?ねぇ?」
「ふーん、まあ、いいけど」
「でもあの子エルくんと同じ制服だったからもしかしたら同じ学校、しかも同じクラスだったりして!」
「そうだったらいいわね、エル?」
「ま、まさかそんな偶然あるわけないだろ!」
そう言って次の日も挑んだ学校。早めに着いて下駄箱で上履きに履き替えているその最中。
「おはよう」
「えっ、うん、おはようって……ま さ か?」
この声は!?
俺が恐る恐る顔を上げると、そこには微笑みながらどこか悪い顔をしている南さんが立っていた。
「昨日の質問答えてくれてありがとう、エルフさん?」
この瞬間、唯一姉から解放される俺の自由気ままの学校生活が終わりを迎えた。
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