第24話 エルフ、スタジオin。

VARが入り、無罪のジャッジがオーナーさんに下されると、未玖が「ちょっとそこで待っててくれる?」と言い、俺だけをこの場に置いて、他のみんなは少し離れた場所で円を作って再び話し合いを始めた。


何故俺だけ外されたのだろうか?不思議だ。


しかし、その話し合いは思った以上に早く終わり、俺のところに戻ってきた。


「じゃあエル、スタジオはこの上の階にあるらしいから早く行くわよ」

「えっ?」

「えっ?じゃないわよ。無償で貸してくれるらしいから、借りない手はないわ」


周りをみると、未玖と俺以外は、エレベーターに乗って俺たちが来るのを待っていた。


「じゃあいくわよ」


未玖はそれだけ言うと、俺の手を引っ張りエレベーターに無理やり乗せた。

それを確認した堀江さんがボタンを押してエレベーターのドアが閉じて動き出した。

見てみると、二階のボタンも押されてあった。

そして二階だったためエレベーターはすぐに止まり、ドアがゆっくりと開いた。


未玖といつの間にか手を握られていた姉さんに手を引かれてエレベーターから出ると、そこは廊下だった。

その廊下の行く先には、スタジオであろう入り口が見えた。

しかし、残念ながら明かりがついていないのもあってここから中身は拝見できなかった。


俺たちは堀江さんに案内されながらこの廊下を進んでいく。

そしてスタジオの入り口の手前に来たところで堀江さんは一度止まり、入り口付近にあるスイッチを押した。


すると、暗くなっていたスタジオがみるみる明るくなっていった。

それと同時に、オーナーさんが小走りで俺たちを抜いていった。そして完璧に明るくなると、オーナーさんは振り返って口を開いた。


「では改めて。ようこそ御三方、私が経営する撮影スタジオへようこそ!!」









おおー、初めてオーナーらしい仕事をしたな。まあ、絶対へこむだろうし、可哀想だから言わないけど。


俺はスタジオを見渡した。

詳しいことはわからないが、色々な機械や道具が置かれて、環境、設備ともにしっかりとしているだろうと思われるスタジオだ。


「へー、オーナーがアレだからスタジオもアレだと思ったけど、結構しっかりしてるじゃない」


未玖はこのスタジオを気に入った様子だ。俺の隣にいる姉さんも気に入ったらしく、目がキラキラしている。


「そうなんですよ。うちのオーナーが経営しているこの撮影スタジオは結構いい感じのスタジオなんですよ。しかも、ショッピングモールとモノレールの駅がすぐ近くにあって立地もいいんですよ?」

「へー、そうなのね」

「でもなんで暇そうにしてるんだ?」

「そうなんですよ。そこです。オーナーはその理由わかりますか?」

「えー、私?そんなの分かってたら対処してるよー?」


堀江さんの頭には怒りマークが点灯した。さすがの俺でもこの状況を色々と察した。


「本当に分からないんですね?」

「え?うん。だから、分かってたら対処してるって言ってんじゃん」


堀江さんの頭にはさらに怒りマーク追加された。


「じゃあいい機会ですし、はっきり言っておきます!貴方の所為ですよ!!オーナー!」

「へっ?私?」


オーナーは馬鹿なんだろうか。いや、馬鹿なんだ。


「そうです!!だったら最初にいたアルバイト十数人が私一人になるわけないじゃないですか!!昔はその人数がいてもあれほど忙しかったというのに!オーナーが可愛い女の子を見つけるたびにナンパするから、口コミにも「このスタジオのオーナーはヤバイから行かないほうがいい」とか書かれるんですよ!!」


いや、そんなに酷かったのか、このオーナーは。


「本当にオーナーは何なんですか?馬鹿なんですか!?馬鹿ですよね!?ーーーーよしっ、言いたいことは大体言えました」


堀江さん、切り替え早くないですか!?てか、超スッキリした表情なんですけど。そんな顔を見ると俺まで気持ちよくーーーーって、あれ?


俺の後ろからはただならぬ負のオーラが。一応振り返ってみる。そこには、隅に座り込んで落ち込んでいるオーナーさんがいた。


「そうか、私は馬鹿だったんだな……。でもな、私だって人間なんだ。あそこまではっきり言われると凄くショックなんだぞ。あっ、いっそのこと……うふふふっ!!」


「や、ヤバイ、オーナーさんが壊れた!?」

「ま、待って!オーナー!それはまだ早いわよ!!」

「姉さん!!見てないで手伝って!!」

「う、うん!!」


暫くその場は、カオスと化したのだった。

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