第4話 エルフ、恥ずかしい失態をしてしまう。
何にもない一角の、なんの変わりもないアパートの一室でエルフは、トゥイッターでネットデビューを果たした後、色々な出来事があり過ぎて頭いっぱいだったのか、悶絶している途中にスイッチを切ったかのように寝てしまった。
今回の出来事は、そんなエルフこと俺が、目を覚ましたところから始まるーーーー
「ご主人様起きて!!誰かが玄関のチャイムを鳴らしてますよ!!ご主人様起きてください!!」
「ふにゃぁあ?」
俺はキャラクターの音声で目を覚ました。
今回の声は声優が桜 舞花なため、『メイド様は幼馴染!?』の冬風 有栖の声だろう。
有栖ちゃんの声ということは、誰かが玄関の前で待っているのだろう。
因みに、俺の家であるアパートは、もちろん借家である。決して俺の所有しているものではない。
ここで話は前のものに繋がってくるのだが、では、「何故借家にも関わらず玄関のチャイムがキャラクターボイスに変えられているのか?」だ。
答えは簡単である。大家さんに許可を頂いたからだ。
大家さんに「玄関のチャイムを変えてもいいだろうか?」と直談判しに行ったところ、「うふふっ、別にいいわよ」と許可を頂いた。
そのため、今現在は有栖ちゃんボイスになっている。
まあ、この話はこんなところでいい。
早く玄関に行かねば!
と、ベッドから起き上がったのだが、胸に違和感が。
「む、むにゅう?」
もしかして俺!?
これは玄関に行くよりも重要なことだと思い、急いで洗面台の鏡に向かった。
「もしかして俺、入れ替わってる!?」
と、そこには見たことあるようなエルフの姿が。
「あっ、そうだ。俺、エルフになったんだった……」
ちょっと憧れていたシチュエーションだっただけに、少しガッカリしながら玄関に向かう。そしてドアを開けて、来客と対面した。
開けてみると、来客とは、この配達のお兄さんらしい。だが、その配達のお兄さんは俺を見るなり、びっくりした様子を見せて微動だにしない。何か付いているだろうか?
「あっ、あのぉ……」
「……ええっ!?あっ、すっ、すみません!配達をしに来ましたですます!!ネットで注文されたと思うんですけど、こちらで問題ないでしょうかです、はい!」
「へっ?注文?」
注文……あっ、お肉注文したっけ。
「そ、そうです」と、ありきたりな答えを返していくが、配達のお兄さんのそわそわし態度は変わらない。
「そ、そうでありますか!!ではこちらにサインをお店願い奉ります!!奉ります!!」
「は、はぁ……」
この配達の人、少し日本語もおかしいぞ?と不信感を抱きつつも、素直に紙にサインをかいていく。
「っと、書き終わりました」
「あっ、ありがとうございますです!!ところで一つ宜しゅうございますでしょうか!!はい!」
いよいよ頭が可笑しくなってきたぞと思いながらも、「いいですよ」と答えてあげる。
「では失礼致します、上官!!その耳は本物でしょうか!!はい!!」
「へっ?耳?」
耳を指摘され耳を触ってみるが、別に変わったところなんて……って、耳がすごい長いじゃん!てか、俺今エルフじゃん!!
ど、どうしよう!?と、とりあえず、偽物と言っておこう!!うん、そうしよう!!
「こ、これは偽物の耳です……よぉ〜?」
無理やり過ぎか??
配達のお兄さんの反応を見た。だが、そわそわしている様子は変わらない。
失敗か……?
「そうでありますか!!余計な真似してしまいすみません!!」
良かった、上手く騙せたようだ。これで安心だな。
「では最後に一つ失礼します!!その格好は男の前でどうかと思われます!!はい!!では失礼します!!」
配達のお兄さんはそれを言い残し、この場から去ってしまった。
「その格好って、何も問題ない筈……あっ」
そう、俺の服装を見てみると、ズボンもパンツも身につけておらず、今身につけているのはぶかぶかのTシャツ一枚のみ。しかも谷間つきの。
「様子が可笑しかったのはこの服装のせいか……」
俺は部屋に戻り、受け取ったお肉を冷蔵庫に入れ、ベッドにダイブする形で寝転んだ。
そして……
「うがぁぁああーー!!!!」
またもや恥ずかしさのあまり悶絶するエルフであった。
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