第347話 年に一回はやること

 わたくしも、スコちゃんとだいぶ意思疎通ができるようになってきたと思っていた矢先の事でした。

 スコちゃん、最近は脱走しなくなって、家の人が外から帰ってきてもあったかい部屋でのーんびりしてるようになりました。

 なのに、あぁっ! 今年も終わるというときになって行方知れずに。


 わたくしがソファで相棒を観ているときは、隣のこたつの上にいました。

 母が仕事を終えて帰ってきたときは姿を消し、こそりとも気配がしない。

 ご飯を食べてから本格的に探し始めたのですが……。


 母の証言によると、玄関から外へは出ていないということ。

 でも家の中で見つからないということは……まさかという思いと、よもやという疑念が浮かびました。

 部屋中の灯りをつけ、雨戸を開け放って懐中電灯を片手に外まで名を呼びつつ探しに行きました。


 けどね、どうにも見つかる気がしない。

 だって、家の中にいるはず! ベランダにもいないし、ソファの下にもいないし、コピー機の下のスペースにもいない。

 こたつの中にも納戸の中にも、家族の部屋にもいないし、トイレやふろ場にもいないしカーテンの裏にもいない。


 これは、異常事態だ! わたくしの声はだんだんと甲高く、かすれてのどが痛くなりました。

 神に祈りました。

 するとなんと天啓が! スコちゃんはリビングの窓際にいる、と。


 でもいない。

 少し気持ちを落ち着けようと、スコちゃんの晩ごはんをしたくしました。

 モンプチ(ドライ)を30グラム計って、餌皿をいつもの場所に置くと……。


 なんと、どこからか(窓の方から)するすると音もなく出てきて、餌皿によって行きました。

 天啓は間違いなかったけれど、どうして見つけられなかったのかがわかりません。

 探す時に祖母がソファの真ん中に座り込んでて見えづらかったところにいたのかもしれない。


 もう、まさかのまさか! スコちゃん、あんまり心配かけないでね(クスンクスン)






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