第218話 2020/05/29/金 君は美しい。

 スコちゃんは一見おっとりしているが、実はとても大胆で頭が良い。

 昼間は涼しいところでくったり寝そべっているけれど、わたくしがベッドダイブしようとすると、同じタイミングでベッドにダイブしてくれる。

 今日なんかも、私が飛んだ瞬間に、白い影が走りこんできたぞ――と思ってそちらを見ながら着地したら、ぴょんこ! と同時にベッドに飛び込んできた。


 かわいいなあ。

 でも、なんだか今日は毛並みが乱れているなあ。

 ブラッシングをしてあげようと思った。


 そしたら、スコちゃん逃げ回って。

 洗面台の隅っこでうずくまってしまった。

 まるでひどい目に遭わされた、というように。


 ああ。

 また私、雑になっちゃったのね。

 と、スコちゃんの毛づくろいの仕方を思い出す。


 丁寧に丁寧に。

 被毛を一本一本、なめるようにブラシを動かす。

 スコちゃんは「最初からそうして」と迷惑げ。


 ごめんなさーい。




 今日はちょっといいことがあったので、それも書きます。

 私、夕食のデザートにルビーフルーツを食べたのね。

 赤い果肉のグレープフルーツなんだけれども、一応柑橘系です。


 で、食べ終わったら水で手を洗って、スコちゃんの顔を撫でようとしたら!

 スコちゃん首をひっこめて、「それはいやなの」っていう顔をした。

 そうよ、猫は柑橘系が苦手! やっと、やっと嫌いなものを嫌いと言ってくれた。


 以前は、私がカクヨムで「スコちゃんを捨てる」という一文を書いてしまったばかりに、スコちゃんは「捨てられても、生きていけるように」って生ごみを漁る覚悟を決めていたらしい。

 なんとむごいことをしてしまったのだろう。

 心をとらわれるのが怖さに、逃げていた己を悔やむ。


 でも、今、嫌だと言ってくれるということは、捨てられたりしない、と信じてくれているのね! うれしい。

 石鹸で手を洗ったけれど、石鹸の匂いもだめらしく、流水でジャバジャバ洗って、ようやくOKが出た。

 かわりにスコちゃんの匂いをつけてもらって、セーフ。


 スコちゃんは、今年中止になってしまった、ユネスコ無形文化遺産の山あげ祭のうちわを持ってきて、ぱたぱたあおいであげたら、しばらく観察したのちに。



「これは風を送る道具ね」



 と冷静に受け止めていた。

 はああ。

 猫なのにすごいな。


 でも調子に乗って、横向き、縦向きに仰ぎまくっていたら、遊びだして、しまいに、うちわに噛みついて穴を数か所空けてしまった。

 このうちわは記念だったんだけれど、いいわ。

 那須烏山市に伝わる和紙の強度をみてやったのよ。


 そう思うことにして、あとはまったり過ごした。






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