第206話 話をしよう

 遊んでくれないのもかまってくれないのもイヤ! って、スコちゃんが言うので、遊んであげようと、猫じゃらしをふって少しの間、ちゃいちゃいして遊んだ。

 あ、そのあとで、スコちゃんは部屋から玄関、さらに書庫、そして部屋、また玄関、とぴょんぴょん跳ねまわり、振り回すので(運動不足解消にはいいか)と思いつつも、女神に頼る。

 すると……。



『少し待ちなさい。追いかけないで』



 という。

 それでも、かまってもらいたいスコちゃんのことを考えると、居ても立っても居られない。

 女神に相談。



『今追いかけないで、スコちゃんを嬉しがらせるにはどうすれば……』



 途方に暮れていた。

 私にできることは、環境を整え、おいしいササミをあげることくらい。

 女神、再び啓示をくれる。



『それでいいの』



 あ、そうなんだ。

 ごはんで喜んでもらえばいいのね。

 そっかー。


 と、思って再びPCへ向かう。

 愛猫にかまけていて、親友のカクヨム作品を読めなかったことを白状せねばならない。

 正直に謝って、PCを閉じたら、そこへスコちゃんが、威風堂々と現れ、またも私をお迎えに来た。


 う、うれしい。

 あ、このことをエッセイに書かねば! とPCの電源を引っこ抜いて、抱え込み、スコちゃんに部屋を出る旨告げて、おいで~~とやったが、すぐにはこない。

 電気を消して、部屋にたどり着いたころ、後から彼女の足音がする。


 あ。

 歯を磨かなきゃと思っていると、入室してきたスコちゃんが、私に声をかけて通り過ぎた。

 ベッドから身を起こしたら、彼女はピンクのベッドに横たわって、こちらを見ていた。



「スコちゃん、歯を磨いてくるから、ここにいて?」


『わかった。我慢できなくなったらどうするの?』


『そしたら、後をついてきて。そうしたら、必然的に体が触れ合うでしょう』


『なるほど』



 はい、歯磨いてきました。

 スコちゃんは、ピンクのベッドの中にじっとしていた。



「ただいま~~、帰ってきましたよ」


『……』


「でも、どうしてスコちゃんはわかるの? 人間の言葉が」


『人間に育てられたから?』


「へええええ!!! それ、エッセイに書いていい?」


『いいよ』



 というわけで、人間の言葉がわかるスコちゃん、さあ、ご挨拶をしてくれるかなー。



『いいよ』



 ではどうぞ!



『わたしはスコティッシュフォールドのシャオリンです。この人はシャオリンと名付けてくれた人です。それからね、おじさんがね、空気のように歩くようにといわれました。ペットショップのおじさんです』



 そうなんだ。

 どうして?



『わからない。そこはわかんなくなっちゃった。えと、プライベートは特にありません。この人がバレバレにするから』



 あいやー、そうだたアルよ。

 でも、あれすごいよね。



『え?』



 玄関先までだーっと走っていって、追いかけると、部屋に飛び込んで、どこいったんだろうと思ってキャットツリーに近づくと、物陰からばあっって、飛び上がっておどろかせてくれるじゃない? あれはふざけてるの?



『攻撃してるんだけど』



 私は楽しかった。

 で、攻撃する意味は?



『面白くないから』



 そうだったのか。

 ごめんよ。

 蜂ぶんぶんがこわれてから、密な時間を過ごしてなかったもんね。



『そうよ。真面目なこと言えばいいのに。とにかく、浮気はダメ!』



 近所の白猫がうずくまって小さくなっているのを見て、死んでほしくない、哀れだと思うのも駄目なの?



『思うくらいはいいけれど』



 そうか。

 PCは浮気?



『うわき!』



 はにゃー。

 ごめんなさい。

 なるべく、PCで遊ぶの減らします。



『減らす?』



 あ、いや。

 本当に好きなのはあなたよ?

 PCは長いこと趣味にしてきたから、いきなりはやめられない。



『いいわ。「自分が間違っていた」くらいでは、わたしの気持ちがおさまらない』



 わかった! 悪かった! なるべく考慮します!



『ほんとでしょうね?』



 ううう。IN率を下げます。



『ならいいわ。自分のことを書けば』



 スコちゃんはダメ?



『誰に見せてるのよ?』



 スコちゃんとの思い出のよすがに書いてるんだよー。



『よすがって、まだ生きてるじゃない!』



 そうだけど、記念にどんな細かいことでも憶えておきたいんだよー。



『それならいいわ』



 はーっ。






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