第207話 2020/05/17/日 一握りのやさしさ

 ふっふっふ。

 ぬかったわ。

 明日でスコちゃんは、成猫になるというのに、子猫用のフードが半ダース以上ある。


 買いすぎだわ。

 で、スコちゃんに相談した。

 ケージの中で唸っているのは、おっぱいが張って痛いんだって。



『子猫用フード余ったのを、あの白い野良猫にやってもいいかな』


『いいよー』



 ということで、発泡スチロールの板に、子猫用フードをあけて、駐車場に置いてきた。

 置いてから顔をあげたら、隣の家のデッキにいた白猫と目があった。

 食べてね、とテレパシーを送って部屋に戻ろうとしたら、玄関でスコちゃんとばったり。


 食べてくれたかな?(それとも、身動き取れないほど、弱ってたらかわいそうだな)

 と思って、部屋の窓から見ると、ちょうど発泡スチロールの前でぺろりぺろぺろとやっているところで、スコちゃんも気になるのか窓辺に立ってうずくまる。

 そして、食べ終わった白猫は、なんと、スコちゃんのいる窓辺へ寄って、みゃうみゃういって立ち去ったのだった。


 何て言っていたんだろう、

 猫の言葉はわからないなあ。

 スコちゃんにお礼でも言ってたのかなあ。


 母はもったいないと言って、反対するけれど。

 一日に一回、子猫用フードを差し入れるくらい、いいのではないかと思っていたら、スコちゃんがいい顔をしない。

 だって、あなたは大人になるの。


 明日のごはんは、シーフードに舌平目に鯛よ?

 子猫用の味わいまぐろは、もういいじゃない。

 あげるのがいやなの?


 どうしたんだろう。

 何か理由があると思うのだが。

 もしや、みゃうみゃう言っていた白猫が、スコちゃんに失礼でもしたのかしら。


 ならば仕方がない。

 そんな恩知らずならば、金輪際差し入れはすまい。

 スコちゃんファーストでいく。


 お隣で猫が死んだら、哀しいが、そもそも、私が守らねばならないのはスコちゃんなのだ。

 そのスコちゃんが嫌がるのであれば、もう、やらない。

 かわいそうなのはスコちゃんだ。


 そのかわり、スコちゃんのごはんが、五月中はずっと子猫フードになるかもしれないんだけれども……。

 明日は彼女の誕生日で。

 ワクチン注射を受けに行く。


 ササミをごほうびに用意せねば。

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