第86話 2019/12/30/月 ギヨ!

 目が醒めたら、どさっと軽い荷物でも床に落ちたような音がした。

 窓際の、多分スコちゃんがいる辺りを見たんだと思う。

 なんだか嫌な予感がして、私はこういった。



「スコちゃん……?」



 果たして、スコちゃんは無事であった。

 そればかりか、彼女にひっくり返されないように、窓際に置いておいた猫草の鉢植えがカーペットの上に落ちていた。

 そのうえ開いた口が塞がらないのには、彼女、それをあんぐとくわえて、私の視界までわざわざ持ってきたのだ。



「これ、わたしのでしょ?」



 って言ってるみたいだ。

 ああ、そうだよ。

 おまえが、段ボールをかじるようになってから、なにか与えねばと思って買ってきた。



 だけど!



 それは芽がでたばかりで、草ともいえない姿をしている。



「わかってる」



 私が悪いんだよな、スコちゃん。

 ……運よく、猫草は伸びるのが早いようだ。

 以前も一晩でもさもさになっていて、あきれたものだが、彼女の食欲以上に驚かされたものはない。


 たった7ヶ月のちっちゃいあごで、鉢植えを持ってくるなんて……。

 かわいいのに、なんか、複雑だ……。

 ドラクエのアリーナ姫を見ている気がする。


 とんだブレイヴ・ストーリーになりそうだぜ。

 と、思いながら意識はのたり、と沈んでいった。

 起きてから、床に散らばった猫草の種を拾いながら思った。



 この分では大みそかに大掃除をする羽目になりそうだ、と……。



 *いや、大みそかはいろいろ準備があるんですよ。

 初詣のしたくとか、願掛けとか。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る