第4話
昼休みになった。
見込み通りか酒井くんは女子にモテモテで、授業の合間の休み時間も女子に囲まれっぱなしだった。
それなのになぜか私を呼び止め、「昼休みご飯食べ終わったら学校案内して」と頼まれ、取り敢えず「いいよ」と返答しておいた。
お昼ご飯をいつもの友達と一緒に楽しく食べると、教室に戻る。
酒井くんは自分の席でどこか飄とした感じで座っていた。が、私に気づくと直ぐに笑顔でこちらへ近づいてきた。
「おまたせ、行こうか」
「お願いしまーす」
「酒井くん、どういう所案内して欲しいとかある?」
「うーんと、古くなってるところ?」
「…?この校舎出来たばっかりだから古いところなんてないと思うけど…」
私達の学校は5年ほど前に新設された学校らしく、校舎も新しい。
そんなの見れば分かることなのに何言ってるんだろうか。
「あー、そうだよねー、じゃあ、俺達のクラスがよく使う場所で」
「うん、分かった」
私はその答えに納得して、案内を始めることにした。
取り敢えず、私達の教室から一番近いトイレと、よく使う美術室、理科室、研修室、職員室、体育館を案内しておいた。
そして気づいた。酒井くんは足がとても遅い。というか変な歩き方をする。
階段を昇る時に不意に一段抜かしたり、廊下を歩いている時に急にぐねっと蛇行したり、「おっと」と呟いて水溜まりを越えるように大きく歩を踏んだりする。
そういうのが結果的に遅くなる原因になっていた。
私は途中で我慢できなくなり何をやっているのか訊くと、そのうち分かるんじゃな〜い?、と妙なテンションで放り出された。ほんと何してるんだこいつ。
折角イケメンなのに、こんな側面を知ったら、彼女達どんな反応するんだろう…きっと皆近寄らなくなるんだろうな。
案内が終わると、時刻はもう昼休みが終わるギリギリで、私達は急いで教室に戻った。
変な歩き方をする酒井くんは、もちろん授業に遅刻した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます