おっさん、早期リタイアしてキャンピングカーでのんびり異世界ライフ

第二十二話 ワイナリー見学 その3

　俺と見学者たちはワーレスさんに案内されて次の見学コースへと進んだ。ワーレスさんは大きなドラム缶を横に倒したような装置の前に止まると説明を始めた。

「みなさん、こちらにある大きな魔導具は圧搾機といいます。先ほどの樽から引き抜いた果実や皮をこの魔導具で圧搾してワインを絞り出します。この時に圧力をかけすぎるとワインに皮や種からの不快な味が出てしまうので、やさしく、ゆっくりと圧力をかけてワインを搾り出します」

　ちょうど発酵が終わったワインを圧搾する様子を見ることになった。圧搾機には横倒しにした巨大ドラムの円筒側面に蓋がついており、そこから皮や果実を投入する。巨大ドラムの表面には小さな穴が幾つも開いており、ドラムがゆっくり回転することで遠心力によってワインを搾りだす。すると無数に開いた小さな穴からワインが絞り出されてくる。下の受け皿でワインを受けて樽に詰め替える。つまり洗濯機の脱水機と同じ仕組みだ。

　樽に詰められたワインはどこに行くのか？　その答えもワーレスさんは説明してくれた。

「さて、これでぶどうの発酵も終わりぶどうはワインとなりました。しかしワインを皆様に届けるにはまだまだ時間がかかります。それでは次の場所にご案内します」

　俺たちが次に移動したところはまったく窓のない薄暗い部屋だ。奥に長い倉庫となっており、そこには数多くの樽が横倒しの状態で安置されている。

「ここがワインのゆりかごである熟成蔵です。ワインの味を決める最終工程でもあります。ここでワインは6ヶ月から3年熟成します。そしてワインの状態をチェックするためにテイスターが定期的にワインの状態をチェックします。いま、あちらでテイスターがチェックしているので邪魔をしないように見てみましょう」

　ワーレスさんが指す方角にはテイスターの方がいてワインを樽から汲み取ってグラスに注ぐと照明にかざして色を見たり、匂いを嗅ぐとワインを口に含む。そして手持ちのノートに何やら記入している。

　そのワインを見つめる真剣な眼差しは、まるで剣術家が真剣勝負に挑むかのような雰囲気を醸し出しており、見学者は息を呑んで見つめるほどであった。

「さて、ワインが出荷されるまではもう少し工程がありますので次の場所にいきましょう」

　俺たちが次に案内されたのはまたなにやら魔導具のある場所だった。

「樽で熟成されたワインは、ここで滓引きをします。滓引きとは熟成中に樽の中で酵母や果肉などが重みで沈殿します。そしてワインの上澄部分を樽から取り出します。そして皆さんの目の前にある濾過器で濾過することで滓を完全に取り除きます」

　ここでの説明が終わると今度は別の建物に移動した。

「いよいよワインの瓶詰めです。ガラス瓶はガラス工場から入荷されたものは一本一本目視検瓶して傷がないかとか品質に問題がないかチェックした後、洗浄します」

　俺たちは検査員の方が照明を当てた瓶を目視で検査しているのを後ろから見学する。そして次に向かったのは瓶の洗浄用魔導具の場所だ。検査が終わった瓶は洗浄の魔道具に入れられて浄化される。元の世界なら無菌水で洗うのだが、ここは魔法の世界だ。浄化魔法で一瞬にして瓶がまとめて綺麗になる。

「洗浄された瓶は充填装置でワインを充填されて打栓機によって瓶に栓をします」

　洗浄機から出た瓶は次から次へと充填装置に送られてワインを充填される。そしてその次には打栓機によってコルクを嵌め込まれていく。

「そして、こちらが最後の工程です。出来たワインにキャップシールをして封印をしてラベルを貼り付けて完成です」

　出来上がった瓶詰めされたワインは最終的な目視チェックを受けた後に出荷用に箱詰めされていく。

「そして、ここから完成したワインが出荷されて、みなさまのお手元に届くわけです。みなさまお疲れ様でした。本日のワイナリー見学はこれにて終わりです。それでは試飲の方はこちらへ。それ以外の方は、こちらのロゼッタさんに付いていってください」

　俺のワイナリー見学はここで終わりだ。試飲をしない人は数名おり、俺たちは言われたようにロゼッタさんについていく。

「それでは、売店の方にご案内しますね」

　ついた先は、ワイナリーの直売所だ。店内には自慢のワインがずらりと並び、ワイン関連のグッズ類も豊富に置いてあり酒好きにはたまらない光景だ。

　これは俺にワインを買えと魂に呼びかけているようだ……。くっ、このままではワイナリーの思惑通りに……。

……。

……。

……。

　もちろん全力で買いますよ!!

　俺は気になったワインをいくつか購入するとホクホク顔でワイナリーをあとにしてウニキャンへと戻った。

参考文献

ワインはこのように造られる！赤ワインの醸造方法とは？　エノテカ　オンライン

https://www.enoteca.co.jp/article/archives/3238/

参考動画

ワイン作り　Cortes de Cima

https://youtu.be/2Z9Lzi9h5Fw