12.魔女さんと話をしてみよう!

 魔女族とは、ドワーフ国の南に位置する魔女島に生息する女性だけの種族であり生まれつき魔法に特性がある。特に箒を使って空を飛行する事を得意としている。魔女族は繁殖期になるとつがいを選び、どちらかが繁殖期のみ男性に変化する特性がある。(旅行ガイドブックより抜粋)


 エルフ国で買った旅行ガイドブックに魔女族の事も書いてあったよ。地球でも性転換する生物いるんだよね。異世界にいてもおかしくはない話だ。


 話を戻そう。コーヒーを淹れてペイシノエーさんに渡す。


「味は少し苦味があるので苦かったら砂糖とミルクで調整してみて」

「良い香りですね。好みの香りです」

 少し飲んでみて苦かったらしくて砂糖を入れて飲んでニッコリしている。もう大丈夫そうだな。

「ところで、ここへは何をしに来たんですか?」


「……」


 ペイシノエーさんが急に冷や汗をかき始めて真っ青に。


「仕事の途中でした!!」

 ガバっと勢いよく立ち上がって俺にマグカップを渡すと、身だしなみを整えて荷物の確認をし始めた。ちなみに荷物は肩掛け鞄だけのようだ。ヘルメットを見ると悲しそうな顔をしたがサクッと諦めて鞄に括り付けた。


「あの、私はこういう仕事をしています!そのうちお礼をしたいので遊びに来て下さい!歓迎しますよ!」と名刺を渡してきた。

「おっ、おう」

「では、急いでますのでこれで!!本当にありがとうございました!!」と言いながら箒を手に持ち呪文を唱えて地面を一掃きすると飛行魔法が発動したのか浮かび上がり、そのまま箒に腰掛けると風のように去っていった……。


 騒々しいお嬢さんだったな。暫く去って行った空を見上げていたが見えなくなったので貰った名刺を見てみる。名刺には『セイレーンの魔女メッセンジャーサービス』と書いてあった。メッセンジャーと言うと地球では自転車に乗って鞄一つで書類を届けて街中を疾走する配達人のことなんだが異世界だと箒で配達するのかな?


 コットやキャンプテーブルやキャンプチェアを片付けてナツと一緒にウニキャンに乗り込んで、近くにあるキャンプ場に向かう。海岸に近いキャンプ場で一泊一八四クローナだった。この手の管理されたキャンプ場は大抵プール付きのようでここにもあった。オートキャンプとロッジタイプとか宿泊タイプ別に値段が違うが何時もオートキャンプなので三分の一程度安い。指定された空きスペースに停めて何時ものキャンプの設営。設営も終わって寛いだ所でビール片手に旅行ガイドを眺める。


 例の魔女島のページを見ているのだが魔女島に住んでいるのは基本的に魔女族だけだが交流がないわけではない。観光地としても有名で観光でも栄えているようだ。男子禁制とかでは無いみたいだな。主要産業は飛行能力を活かしたメッセンジャー事業のようだ。その他には魔女特製薬品の販売とか占いや呪いとかもやっているようだな。


 魔女島への行き方だが基本的には空路以外だと船になる。カーフェリーもあるようなのでウニキャンで島に渡ることも出来るようだ。フェリーは今いる港町からも出ているようなので都合が良い。


 次は魔女島に行こうと決めて旅行ガイドブックを閉じると晩飯の用意に取り掛かる。魔女のイメージと言えば大鍋で何かを煮込んでいるイメージが有る。今日はシチューでも作ろうかと考えるのであった。

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