08.造船所を見学しよう!前編

 朝から造船所見学の為に港に向かう。今回見学する造船所はドワーフ国でも五指に入るほどの大手で一般の人向けの広報活動として見学会を定期的に開催しているそうだ。


 見学者向けに指定された駐車スペースに止める。今回の見学はペット持込み不可なのでナツはウニキャンでお留守番である。キャンピングカー内はエンジンを止めていても常に空調も効いていて快適なので車内に置いてきても心配する必要がないのは有り難い。


 外来者用の受付で署名して中に入るとマイクロバス型の魔導車が停まっている。係の人がいるので予約票を渡すと予約票と引き換えに見学者の紐付きのタグを貰う。造船所内では見学者タグを外さないようにと言われたので首からかけておく。


 マイクロバスに乗り込むと既に何名か乗車している。車内は一人シートと二人シートに分かれていて二〇人以上は乗れそうだ。マイクロバスと言ってもドワーフの体格を基準に作られているので車内は俺にとっては十分な広さがある。一人で来ているような人や、夫婦で来ている感じの人たちとかいる。俺にとっては大きめな一人掛けのシートに座って見学が始まるまで待つのであった。


 定刻になって担当者らしきドワーフの男性がマイクロバスに乗り込んできた。手にはクリップボードとヘルメットが入った箱を持っている。


「皆さん、おはようございます」

 見学者の皆さんも「おはようございます」と返す。


「本日は弊社造船所の見学ツアーにご参加していただいてありがとうございます。見学ツアー担当のアマラウと申します」

「それでは今からヘルメットを配りますのでヘルメットの着用お願いします」


 アマラウさんはヘルメットを前方の見学者に渡して貰った人は後ろに回していく。学生の頃によく見た風景だなと何となく思う。ヘルメットを配り終えた後はヘルメットの正しい被り方のレクチャーがあり、見学中は決してヘルメットを脱がないようにと注意があった。


 見学中の諸注意を一通り話した後、いよいよ造船所見学に出発だ。


 最初に向かったのは造船資料館。造船工程をあらかじめ学ぼうというパートだ。目的にあった船の設計から始まり、生産計画で生産工程を管理して円滑に作業が進むように計画を立てる。資材等の発注、搬入があって造船場内の工場でまずは作業が始まる。


 鋼材に錆止め処理の魔法を掛けて表面処理をする。鋼材を部品の大きさに切断して外板などを製作。出来た部材を組立て大きなブロック状に組み立てる。ブロック状態で配管とか魔導管等の艤装を施す。狭い空間だと艤装がやり難いので組み立てる前に艤装するのだ。


 出来たブロックは検査の後、工場から出荷されて大型クレーンによって建造ドックに運ばれて積み木細工のように順番に積み上げられて組み立てられていく。


 組立終わったら進水式。地球での進水式は船尾から海に向かって滑らせて浸水する方式や岸壁の上から造船台に載せた船を右舷みぎげん側から滑り落とす方式やドックに注水して進水式とする方式と三つの方式がある。


 この造船所は大型船を建造しているのでドック注水型のドック進水式ようだ。進水式が終わったら岸壁で艤装工事。全ての艤装が終わったら海上試運転を経て命名引渡し式で完成となる。


 この様な工程展示が模型や映像を使って再現されていて見ていて面白かった。


 資料館の中には巨大な魔導機関とか魔導水流噴進機とかが展示されている。この世界の船舶はスクリューは使わないようでウォータージェット推進が主流のようだ。他には昔の艤装品の数々や古い工作機械や今まで建造した船舶模型や造船所社史のバネル展示などが展示されている。


 資料館の見学も終わったので、いよいよ実際の製造現場の見学だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る