09.ラリー最終目を楽しもう!
ラリー三日目、つまり最終日だ。これで総合優勝が決まる日。参加者も気合が入っているようで言葉数も少なく早朝から黙々と作業を
チームによっては車両が壊れた所を直したりと忙しそうだ。小型車部門は昨日のレースでリタイアが出たようで数チームが
本日の天気は曇り空。なんとも怪しい雲行きだ。腕時計の気圧グラフを見ても急激に気圧が下がっている。地球の大気圧とこの世界が同じわけではないので、あくまでも目安だが雨装備を用意しておいた方が良いだろう。
レースが始まって各チームが昨日までの順位順でスタートしていく。やがて俺達の出番が来たのでタイムキーパーによりフラッグが振られたのを合図にスタートする。
今日のレースは舗装路は無しで全て未舗装路のコースだ。暫く進むとフロントガラスに数滴の雨粒が……。雨が酷くならなければよいが……。
第一区間は小雨状態だったが、第二区間では本降りになり道が
盛大に泥を跳ね上げながら進んでいく。時折、道が川になっていたりする所を水飛沫を上げながら走っていく。乾燥した土地で雨が降ると大変なんだよな。枯れていた川が急に増水したりして洪水のようになる。
第二区間もウニモグ的には問題無く走破。走り終えて何だかんだ言って雨中のドライブだったので緊張していたのかホッとする。
第三区間のレースが始まる頃にはさらに雨足が強くなり豪雨状態だ。視界も悪いので慎重に行こう。
慎重に進みつつ急に出来た川を渡河して水飛沫を上げながら進む。暫く走ると薄っすらと前に魔導車が見えてきた。もしかして虎獣人チームかな?と思いながら走っていると右カーブで曲がりきれなかったのか左側の斜面をずり落ちて行く。
あっ、と思って現場に駆け付けてみたら斜面下の所で止まっているようだ。幸い横転はしてない様で虎獣人の兄妹がトラックから降りて車体の様子を見ているようだ。
「おーい!大丈夫か?」
「ああ、ヤマノか、ドジして落ちてしまったよ」
「この斜面を登れそうか?」
「少し試してみたが難しいな、雨でタイヤがグリップしないし、タイヤが泥に埋まってしまう。この傾斜だと登るのは難しい」
俺は少し考えて提案する。
「俺のウニキャンで下まで降りて引っ張り上げよう」
「そんなこと出来るのか?」
「大丈夫だ、問題ない」
ウニキャンで斜面を降りると、虎獣人達にも手伝ってもらってフロントのウィンチのワイヤーを斜面上の手頃な樹木に括り付ける。
流石、虎獣人。泥濘んだ斜面を一瞬にして駆け上がる。適材適所というやつだ。
牽引用のワイヤーでウニキャンと虎獣人チームのトラックを繋ぐ。後はウィンチを巻き上げながらゆっくりと引き上げる。デフロックがあるのでしっかりとタイヤがグリップして登っていく。
時間は掛かったがなんとか二台ともコースに復帰した。コースに復帰する頃には、あれだけ酷く降っていた雨も上がって太陽も見えている。雲はあるが晴れた空には虹も出ていて広大な景色に映えて綺麗でレースを忘れて眺めていたいほどだ。
「ありがとう、ヤマノのおかげでレースを続けることが出来る」
「まぁ、いいって事よ。困った時はお互い様だ」
「ヤマノが先に出てくれ、オレ達は後から行くよ」
「わかった、では良いレースを!」
救出に時間がかかったため俺達は優勝争いから外れてしまって俺が二位で虎獣人チームが三位だった。
三位でスタートした兎獣人チームが優勝で、四位以下は悪路で途中棄権したようだ。
最初のスタート地点だった闘技場にゴールした後、ウニキャンで熱いシャワーを浴びて体を温める。結果はともあれ充実した三日間だったな。
表彰式の後はアフターパーティーが別会場であるらしいので、参加費分は食べて帰りますか!
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