04.屋台の仕込みをしよう!

 さて、仕込みを始めようか。


 ここは都の外れにあるキャンプ場。自然を愛するエルフの都市には、このようなキャンプ場が都の周囲にいくつかある。都で祭りがあった時とかに急激に増える訪問客で宿屋がパンクするので、それを回避するための場所でもあるらしい。ちなみに直火は地面が傷むから禁止だそうだ。宿泊料は一泊二六〇クローナ。管理人付きのキャンプサイトなので無料というわけにはいかないよね。


 昼に食べたカレー味のソーセージを食べて思いついたのだが、カレーは売れるんじゃないかなと。

 カレーライスだと提供するのに皿とスプーンがいるし食べる場所も確保しないと不味いので屋台向きとは言えない。日本にいた時もカレーライスの屋台はあるにはあるから出来ないわけではないが今回は見送った。使い捨ての食器はあまり手持ちにないのもある。広場にはベンチとかあったけれど沢山の人が座る場所も無いので手持ちで食べれると良い。


 で、カレーパンが良いのではないかと思いついたのだ。本格的に作るなら揚げたりするが、今回はこの地方にあるフラットブレッドを使って、ブレッドに切れ込みを入れて稲荷寿司を作るような感じで包んで提供してみよう。


 カレーパンのレシピもあったはずだとレシピ本を引っ張り出して探してみたらあったのでそれを見ながら作っていく。

 ちなみに俺が持っている本は全て電子書籍なので地球にいた時に購入した本はすべて手元にある。


 まずはネタになるカレーから。みじん切りの玉ねぎとにんじんをフライパンで炒めて鹿肉のひき肉をそこに加えて更に炒める。よく炒めてひき肉がそぼろ状になったらカレー粉とガラムマサラを投入。水を少し加えて煮込む。これでカレーは出来上がり。


 あとはひたすらパンを焼いていく。フライパンで作っているので焼く感じはパンケーキを焼いているようだ。これを一〇〇枚ほど作って完成。当日の売る時にパンにカレーを詰めて売るという寸法だ。今回のフラットブレッドには普段は入れないイースト菌を使っているのだが理由としては膨らますことでパンに切れ目を入れて袋状にしやすいからだ。イースト菌使わないと本当に平たいパンになっちゃうからね。


 仕込みも終わったので明日に備えて寝るとするか。ナツはベッドにしている籠の中でとっくに夢の中だ。そんなナツを撫でながら眠りについたのであった。


 翌日、決められた屋台スペースに到着するとさっそく設営。今回はお客さんに売っている物がわかりやすいように見本を置いておく。食品サンプルというやつだ。ただし本物だけれどね。


 カレーの匂いはスパイシーで強烈なので昼頃になるとお客さんが匂いにつられて寄ってくる。カレーパンの説明をしながらフラットブレッドを半分に切って真ん中に切れ込みを入れて熱々のカレーを中にすくって入れる。薄手の紙に巻いてお客さんに渡す。値段は五五クローナ。一人に売れるとそれが呼び水となって段々と売れていく。そんな感じで午後一時過ぎには完売。二〇〇ほど売っただろうか。とりあえず感触は良かったので明日の仕込みはどうするかなと考えながら撤収したのであった。


 早く店仕舞したからといって暇なわけではない。商工会議所に行って本日の税金を支払い、明日の仕込みのための食材を買い出しに市場で買い物。それが終わったらキャンプ地で明日の仕込み。そんな感じで一日を終えるのであった。


 晩飯までには全ての仕事が終わったので晩飯を食べながら晩酌。地球にいた時には残業続きで深夜まで仕事していたので晩飯と晩酌でゆっくりなんて出来なかったな。


 本日は缶ビールだけれど麦芽一〇〇%の一番搾り生ビールだ。ビールグラスに二度注ぎしてグラスを満たす。こうすると泡が綺麗に出来て美味しいのだ。


 缶ビールを缶のままで直接口をつけて呑む人がいるけれど出来ればグラスに注いだほうが美味しく呑める。味覚というのは舌だけでなくて鼻でも味わうものなんだよね。美味しい食べ物を鼻を摘んで食べてみるとよく分かるが、味がしなくなることがある。缶コーヒーもそのまま飲むよりカップに移して飲むほうが美味しさが違ってくる。


 実際に宇宙ステーションで飲むコーヒーはチューブ入りなんだけれど、それでは美味しいコーヒーが飲めないとエスプレッソ大好きなイタリア人が宇宙用のエスプレッソマシーンとエスプレッソカップを作ったぐらい匂いは重要なんだよね。


 そんな取り留めもない事を考えながらゆったりと焚き火を楽しみながらナツと一緒に夜を過ごすのであった。

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