新しい道

勝利だギューちゃん

第1話

「やあ、生きてる?」

久しぶりに現れた彼女は、憎まれ口を叩く。


口は悪いが気はいいので、そこが彼女の人徳か?


「久しぶりに会って、第一声がそれですか?」

「うん」

即答かよ。


「で、何のようだ?」

「ご機嫌伺い」

「暇なんだな」

「君ほどではないけどね」


あっ、彼女は生きています。

幽霊になって現れたと言う、ありがちな話ではありません。


それと彼女というのは、3人称の彼女で、恋人の意味ではない。


「私、君の恋人ではなかったんだね。がっかり・・・」

「泣き真似はよせ」

「わかった?」

「付き合いは、古いからな・・・」


いわゆる幼馴染の腐れ縁。


人の縁とは、もろい。

強く見えても、一度切れてしまえば、元には戻らない。


そして切れたら、転落するのだ。


「冴えない顔してるね。君は・・・」

「余計なお世話だ」

「何かあった・・・昔からか・・・」

「呆れているな」

「うん」

また、即答か・・・


「で、本当の目的はなんだ?」

「ここに来た?」

「ああ」

他にないだろう。


「おじさんと、おばさんから聞いてない?」

「お前が来るとしか聞いていない」

「じゃあ、教えてあげる」

「遠慮しておく」

「聞きなさい」

「やだ」

「わがまま言わない」

「どっちが・・・」


30分ほど、言い争いが続いた。


「でね、私がここに来たわけだけど」

「手短に頼む」

「んーとね」


先手を打ってみた。


「まさか、ここで厄介になるとか、嫁に来たとか言わないよな」

「その通りだよ。よくわかったね」

彼女は、拍手をする。


「しかし、何でまた?僕たちはそういう関係では・・・」

「おおありだよ」


彼女が近づいて、耳打ちをする。


「君は、私がいないと、生きていけない。

そして、私も君がいないと、生きていけない。」


「どういうことだ?」

彼女に問う。


「私と君は、飛行機の主翼と尾翼のようなもの」

「というと?」

「どっちがかけても、飛べない。私と君は、ふたりで初めて飛べる」


彼女は空を、指差した。


「あの、大空をね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新しい道 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る