第120話 女神見習い、おしかけドワーフと対峙す(2)
いつものようにギルドに納品を済ませ、カーラとおしゃべりしていたら後ろから鋭い視線を感じた。うん、なんか背筋がぞくぞくってしたんだよね……正面にいるカーラはその正体を見てるはずなんだけど特に反応してない……なぜ?まさか幽霊とかっ?だからカーラには見えてないのっ?あれ?幽霊ってゴースト?ゴーストなら魔物だよね?見えるはずだけど……あれれー?
混乱しているとカーラが苦笑しつつ私の後方へ声をかけた。
「おはようございます。工房はどうでした?」
「あ、いや……その」
振り返ってみると……かわゆい女の子がおりました。よかったー!透けてないし多分生きてる!それなのに背筋がぞくぞくってしたのはなぜだ?
……ん?おっ、腕に見覚えのある腕輪発見!
「あ、あれ?その腕輪……もしかしてユリスさん知ってますか?」
返事がない……てか、話しかけたら涙目になっちゃったんですけどっ!若干睨まれてる気もするけど……上目遣いなのかな?
「あれ、勘違いかな。ごめんなさいね」
勘違いかあ、腕輪が似てるだけなのかぁ……本人だったらユリスさんすごく喜んだだろうに。
女の子はうつむき黙ったままプルプル震えだした……え、これ私が泣かせちゃったパターンのやつ?って焦ってたら
「こぉんの、ユリスはわたしの許婚だあぁ!」
女の子が突然ギルドで襲いかかってきた。あ、泣いてなかったわー……って!なんかいきなり修羅場の様相なんですが……何故?
とりあえず頑張って?かわしながら、距離を保つ……だって殴られたら痛いじゃん!まー、結界あるから平気なんですけどねー!えへ。
「あの、やっぱりユリスさんの許婚のエヴェリーナさんであってます?……とりあえずギルドに迷惑なので落ち着きませんか?」
ほら、後ろのカーラとか怒ったら怖いんだよ?サブマスがいないことが救いだけど、カーラもなんか目がギラギラしてるし……周りの冒険者たちも修羅場か?面白そうだ、酒の肴にしてやろうとニヤニヤした野次馬が増えて来てるし……
エヴェリーナさん(推定)は周囲から視線を感じたのか、少し冷静になったようなので……
「とりあえず移動しませんか。ここで注目されたまま話したいなら別ですが……」
「わ、わかった」
移動して近くの店で話をすることに。このお店、人に聞かれたくない話はここでするって有名なところで半個室になっており話が漏れない魔道具も使用できるから便利。ちょっとお高めだけど……情報戦に勝つためには必要経費って事で人気なんだとか。
「さて、改めまして私はエナです。ポーション職人やってます」
「わたしはエヴェリーナ……冒険者……」
「で、ユリスさんの許婚。ですよね?」
「そ、そうだっ!ユリスは私の許婚なんだ!うわああぁぁん」
突然泣き出してしまった。感情の沸点が低いのかな?さっきも突然怒り出したし……
目の前で泣きじゃくっている彼女は背は私の肩あたりまでしかなく可愛らしい顔、筋肉は結構付いてるようだけど見た目は完全10代なわけで……とにかくかわゆい女の子である。
確かドワーフの成人すぎてるから、ほんとは30なのに……そんな彼女が泣いてたら、なんか私が泣かせてるみたいじゃないかぁ。人目を避けてよかったよ……あのままギルドで話してたら日が沈む前に噂になるところだよ。いや、すでにあそこにいた野次馬たちが噂を広げているかも……ま、さっきも涙目だったから面白おかしく広められてるなー。あーあ、せっかく築いた信用が……ん?特に築いてないか。
ふぅー。気を取り直して……
「あの、なんで泣いてるんでしょうか?」
「そんなの、お前がユリスを取ったからだろおおぉ……えっぐ」
ユリスさんを取った……えー?とってないよね?
「なんか誤解があるよう……」
「そんなことないもん!昨日見たんだから!ふたりがっ、同じ家に入ってくとこ……うっ、ぐす」
「あー、それでか……はあ、とにかくエヴェリーナさんはユリスさんとの結婚が嫌で集落を飛び出したってわけじゃないんですよね?」
ここ重要。答え次第で対応が180度変化するからね。
「うん、わたしの選択は自分勝手だってわかってたけど……ユリスなら待っててくれると思ったのに」
「それならご自分で伝えてみては?」
「だってあなたと恋人なんでしょう!?」
なんかちょっとめんどくさくなってきたな……
「安心してください。彼はただの下宿人ですよ」
下宿人兼料理担当でわたしに借金があるけどね……
「え、下宿人……だ、だって街で美男美女のカップルだと噂になってるって…」
はぁ?そんな噂初耳なんですが!?
「え、なにそれ……今初めて知りましたけど」
情報源はどこですか?お仕置き(トラウマゴリゴリ)が必要ですか?それとも話し合い(物理)が必要なやつですか。よし、その時はキュリエルに頼もうそうしよう。
「いやー、お恥ずかしながら私は料理が得意じゃなくて……ユリスさんに料理担当していただいてるんです」
「うん、ユリスのご飯美味しい」
あら、笑顔可愛い……くっ、年上なのにっ……
やだー、こてんて首傾げて……あざとい……なんか負けた気分。
「で、昨日は私が買い物当番だったんですけど、食材を直接選びたいとかで一緒に行ったんですよ」
うん、そう言われた時……私の食材の選び方に問題あるのかと不安になったけどそういうことでもないらしい……多分。まぁ、私は美味しいご飯が食べられたらそれでいいんですよ。上げ膳据え膳って最高だよね!
一応、ユリスさん&私、ユリスさんひとり、私ひとり、私&リディというお買い物ローテーションを組んではいるけど、ほとんどの場合ユリスさんが自主的に買い物に行ってくれるのだ。
昨日は任せきりも悪いし、たまには私が!って思ったらなんやかんやあって結局ユリスさんが付き合ってくれたんだけど、それが誤解を産むことになったんだね。
「家には他にも人がいますし……誤解かと」
「じゃ、じゃあ!ユリスは……」
自分を待っているか知りたい……と。
「うーん、ご自身で確認してみてはどうでしょう?」
「で、でも……」
よし、連れて行って2人で解決してもらおう!け、決してめんどくさくなったらわけじゃないんだからねっ!
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