第112話 女神見習いと甲羅
「そうだ、ユリスさん。さっき庭に甲羅を置いたんですけど加工できたりします?」
「……甲羅ですか?」
「はい、ダンジョンにいたカメの魔物のドロップ品です」
「そうですか。うーん、見てみないことにはなんとも」
外はもう暗いので《#灯__ライト__#》で照らしつつ庭の片隅へ……
「あ、ライム。これは食べないでね」
『わかったです!食べないです!』
「これですか……」
「はい」
ユリスさんは甲羅をコンコンと叩いてみたり、ひっくり返したりして観察している……おおー、さすがドワーフ。あれ結構重たいのに軽々とひっくり返せるなんてすごい……え?私?無理無理。重ねて置けたのもストレージから出したらそうなってたからだし……すぐ終わってリディとユリスさんの料理を作ってる姿を見守ってましたが何か?
「うーん……色々と試してみないことにはなんとも言えないです」
「そうですか。できればこの甲羅リディが持てるくらい軽量にしてくれたらいいなーって思ったんだけど……」
「……ん、私のなの?」
「うん、この甲羅ってブラッドベアの攻撃を1度くらいなら耐えられるんだって。さらに上手く加工すれば強度も増すらしいのね?派手な防具よりいいかなーって。それにサイズもいくつかあるから小さいのなら軽量化したらギリギリ持てるかなって思ったんだけど……」
うん、比較的大きな甲羅をルカが選んだから……あれ振り回せるルカもすごいよね。
「ん、そうかも……」
「ほら、この色なら割と地味だしいいかなって思ったんだけど……」
「ん、お魚よりはいい……」
やっぱりあの鱗は嫌だったみたいだよ……うん、リディのそばで聞いていたブランも満足そうだ。これで顔にバサバサしてこなくなるといいなぁ。そしてユリスさんへのプレッシャーがすごいね……
「うーん……リディが持てるくらいに軽くですか……」
「あっ、もしそんなに軽くできないなら、甲羅を分割して腕につけるとか胸当てにするとかでもいいんですけど……もちろん余ったら店舗に置いて売り出してもいいし」
「そ、そうですね……少し考えてみます」
「お願いします」
「ん、エナの分も……あとブランも欲しいって」
「んー……ブランかぁ。ヘルメットくらいしか思いつかないんだけど……重さによっちゃあ無理かも……」
そういうとブランはできるとばかりに猛アピール……
「ブラン……」
「わかりました。強度を落とさずに軽くする方法も考えてみますが、ひとまず採寸だけさせてください」
まぁ、私的には結界があるから、盾はなくても問題ないけど……リディがそう言うなら喜んで付けちゃいますよねー!
私とリディは簡単な採寸やリディがどれくらいの重さなら持てるか試し、ブランは細かな採寸を済ませた……結果、やはりリディがずっと持つのは厳しいだろうという話になり、分割した方がいいという結論に至った。
「甲羅の分割ですか……その方法が問題ですよね」
「あ、そういえば甲羅の筋?溝?……とにかくその方が強度が弱いって聞きました!だからカメが甲羅に閉じこもった場合、冒険者もそこを狙って攻撃するそうです」
「そうですか……うん、色々と頑張ってみますね」
「特段急いではないので暇な時にお願いします」
「ん、お願い」
「……腕がなりますね。頑張ります」
ひとまず甲羅は庭に置いておくことになった。
「じゃあ、今日はもう帰りますね」
「はい」
「またねー」
「ん、また」
「ライム、付いてきてー」
『わかったです!』
森の家にリディ、ブラン、ライムと共に帰りライムにひと通りの案内をする。
「この家の周囲には結界が張ってあるんだけど、害意を持ってなければ出入りは自由だから」
『わかったです!』
「この辺には危険な魔物もいるから気をつけてね?」
『わかったです!とりあえず今日は庭の隅でお世話になるです!』
「あ、でも畑のものは食べないでね?」
『わかったです!』
「……ん、湖も」
「あー、そうだった。近くの湖も魔物出るから注意してね」
『わかったです!』
その後、数日は畑の世話をして納品用のポーションを作ったり、部屋の空気を入れ替え、掃除や洗濯をしつつ、リディとのんびり過ごした。うん、こういう休養も必要だよ!その間、ライムもお婿さんを探しながら庭でのびのびと過ごしたようだ。どうやらライムはご飯を分けてあげるとお礼としてスライムゼリーをくれるみたい……ま、時々結界の外で何かしら捕まえて食べてるみたいだけど。うん、庭に出て消化中のライムと出くわすとちょっとびっくりするよね。
久しぶりにポーションパウダーもいくつか作った。うん、多分ギルドに行ったら見せないといけないだろうし……とりあえず公認の印はつけてない。
最近、神様は泊まりにきても姿を見せない方が多いので何もしてないのに宿泊代をもらっている……宿代のほとんどが魔結晶や食料品なのはアルさんやメルさんが広めてくれたからかな?もちろん他の色もあるけど、黄色はありがたくリディのポーションにしている。
リディもそれをわかっているからか、小さな瓶に手作りジャムを詰めお持ち帰りの際はどうぞと棚に並べていた。うん、結構なくなる頻度高いから今日はギルドへ行った帰りに果物をたくさん買ってこよう。
時々、庭の木像が勝手に増えているのだけどやはり神様の木像だけあって効果があるのでありがたいやら、なんのもてなしもせず申し訳ないやら……
「ま、いっか……」
「ん?」
「ううん、なんでもない」
「ん」
「リディ。今日はギルドに行ったあと、ジャム用の果物とか買い物してくるつもりだけど、何か欲しいものはある?」
「……ん、ジャム用の瓶がなくなりそう」
「わかった」
ほとんどの神様は瓶なんか返却してこないから結構頻度で数が少なくなっちゃうんだよなー……よし、たくさん買ってこよう。
「じゃあ、行ってきます」
「ん、いってらっしゃい」
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