第69話 女神見習い、精霊に懐かれる?(2)
さあ、商業ギルドへ行きますか。
ちなみに精霊は見届けるつもりのようでピッタリ後ろを付いてきている。精霊魔法の使い手でも見えないと自慢げだ。
では、なぜ私に見えたのかといえばキュリエルが姿を見せていたかららしい。それでも、テリトリー外で姿が見えるのは精霊魔法を持っているからなんだって……何にも知らないんだねって色々と教えてくれた。うん、ちょっと小馬鹿にされた気がするけど、気したら負けだからさ……
でも、キュリエルが精霊魔法について教えてくれたおかげで、今まで不思議だったファルシュ草が簡単に見つけられたのは精霊が勝手に魔力を取り導いていたためだとも知った。
魔力を勝手にとられていたのは驚いたけど、大して影響もなかったし……まぁ、いいか。どおりで他の人が見つけられなかったわけだね……
精霊魔法とは精霊と会話や契約召喚などが行える魔法だといい、精霊が薬草の場所や魔物の気配など教えてくれるらしく、通常ならば精霊との相性などが合わないと探知範囲が狭くなったり、目的の物の場所がズレたりするらしい。
契約する場合もあれば、その場限り魔力の提供で力を貸してくれることもあるとか。
今となっては精霊魔法の使い手自体が非常に少なく、暇な精霊が遊びがてら薬草採取の協力してくれてたみたい……暇なって……と思うが助けられたのは事実なのでこれからも是非お願いしたい。
「だからいつの間にか精霊魔法がレベルアップしてたんだね。納得だわ……」
商業ギルドへ着くとメリンダさんが出迎えてくれた。なぜか毎回メリンダさんなんだよね……サブマスになんか言われたのかな。
「エナさん、どうされましたか? まだ例のお茶は入荷してませんが……」
「あぁ、違います。家を買おうと思いまして。ここで扱っていると聞いたもので」
「……はい、取り扱っております。こちらへどうぞ」
いつものカウンターとは別の商談スペースへ案内された。メリンダさんがこのまま対応してくれるようだ……何でもできるのね。さすがサブマスの奥さん。
「それでは早速ですが、ご希望の場所や広さなどございますか? 公認職人のエナさんなら信用も高いので融資も可能ですよ」
「そうなんですね……あの、実はもうほしい家が決まってるんです。街の外れにある大きな一軒家わかりますか? あの家が欲しいんです」
告げた途端、メリンダさんはなんだか気まずそうだ……空気が緊張したというかなんというか。
「あ、あの家ですか……それでしたら他にも好条件の物件がありますけど……」
おっと、隣の精霊さんのご機嫌がななめに……
「いえ、あの家がいいんです……売買価格はいかほどになりますか?」
まあ、値切りますけどねー。
「少々お待ちいただけますか? 上に確認してまいりますので……」
メリンダさんは少し落ち着かない様子で奥の部屋に入っていった。
あれってギルドマスターの部屋なんじゃ……この精霊さんよっぽど問題起こしてるな。横をじろりと見るも当の本人はどこ吹く風だった。この精霊、何気に上級なんじゃ……
「お待たせしました。まずは確認ですがあの家がいわくつきなことはご存知でしょうか」
「あれですよね? 買おうとした者が次々に具合が悪くなったり、よくないことが続いて不吉だと噂の空き家……で合ってますか?」
「その通りです。失礼ですが、エナさんはそれでも購入をご希望ということでよろしいですね?」
なんかやたらと確認してくるな。まぁいいけど。
「はい、もちろん価格にもよりますけど……」
メリンダさんは大きく息を吐き、少し緊張が解けたようだ。
「本来ならば金貨7枚のところ金貨5枚でいかがでしょうか」
金貨5枚といえば大体市民の3~4ヶ月分の生活費に相当する。
小さな部屋や家ならひと月、銀貨5枚から借りられるらしいので、1年弱で元が取れることを考えると安いような気もするけど……うーん、悩むな……今までの稼ぎで買えないことはない……けど。ダメもとで
「もう一声!」
「も、もう一声ですか!?……すいません、もう1度相談してきます」
なんかすいません……次の価格でごねずに買おう。金貨5枚でも買えないことはないんだし。買わないという選択肢は精霊さんのおかげでないものでね。
「エナさん、大変お待たせしました。すべての手数料込み、金貨2枚でいかがでしょうか? これ以上はさすがに無理だそうです……」
うわっ、思ったより安くなっちゃったよ。初め価格の半額以下になっちゃったけど……
「そ、そんなに安くしても大丈夫なんですか?」
自分で値切っておきながら、なんだか申し訳なくなってきた。
「はい、その代わり購入後、何かトラブルが起きても自己責任という文言を契約書に入れさせていただきますがよろしいでしょうか」
「構いません。じゃあそれでお願いします」
若干、値切りすぎたかな……一瞬罪悪感が頭をよぎったけど無視無視。
トラブル防止のためご確認願います。と差し出された契約書にしっかり目を通し、手続きや支払いを終え、予定外だった2軒目の家ゲットしました。
売買契約を済ませると精霊は嬉しそうだった。よかったね。また、ポーション売って稼がないとなぁ……
ところで……商業ギルドで売買契約後、家の門のカギは魔道具になっていて登録しないと開かないなかなかの優れモノなんですよと使い方を説明されたんですが……あれ、さっき私、普通に家の中に入れたけど……どうやら精霊さんが勝手に開けていたようですね。
キュリエルはこの家を守り続け、私はこの家を瞬間移動に利用できるし、結果的にはお互いによかったんじゃないかな。
さっそく自分の家になった家の中を見て回る……これかなりのお得物件だったわ!
精霊を除けばだけど……なんかギルドの皆さん値切ってすいません。
玄関を開けるとそこには広めの玄関ホールがあり奥まで廊下が続いていた。その途中に2階へと続く階段がある。
1階は右手の部屋に行く扉を開けるとそこにはリビングやキッチン、左手の部屋には物置と客間、廊下の突き当りには水場がある。お風呂っていうものはなかった。こんなに大きなお家にもお風呂ないんだなぁ。湯船は格別なんだけど……やっぱり難しいんだろうな。
家具などもついているので新たに買う必要がなくて良かった。トイレとかお風呂はとりあえず簡易シリーズを使おうかな……感謝ポイントを交換して置いておくか、毎回出して使うか、どうしようかな……
2階は個室のみで左右対称の作りの部屋が2つずつと奥に大きめの寝室が1つ。こちらも家具などはあったのでそのまま使用できるね。ただ、私1人には広すぎるけど……
そして庭にある物置だと思っていた小屋は前の住人のおじいさんの工房だった。かつてはこの街で名の知れた鍛冶職人で武器や農具など幅広く作っていたらしい。ドワーフからも腕を認められていたほどなんだとか……あ、これは精霊のキュリエルからの情報ね。
やはり、家自体の作りはかなりはいいものだった。こだわって造られていたようだ。こんなお家なかなか手にはいらないからラッキーだったよ。キュリエルが綺麗にしてくれてるおかげて傷みも少ない。
今でも誰も近寄らないので結界は必要ないだろう……いざとなればキュリエルが追い払ってくれるはず。
アルさん曰く、女神の聖域がレベル4になると森の家と繋げることも可能らしく……聖域指定するとなんちゃらかんちゃら……消費魔力が半端ないらしい。アルさんはいとも簡単に使ってましたけどね。
はっ、話が逸れてしまった。
多少傷みのある部分ば今日のところは直す時間もないので今後ゆっくり修繕していけばいいかな……だって森の家のボロさと比べればなんてことないんだもの。
「じゃあ、キュリエル。近いうちにまた来るね」
「うん! ありがとう、エナ」
瞬間移動でエナが森の家へ戻った後ーー
「うわぁ……本当に消えちゃった……ふふっ、ねぇマリー……あの子ならこの家を大事にしてくれそうだよ」
かつての主人を思いながら新たな出会いにワクワクしていた……契約はしないけど時々なら力を貸してあげようかなと思うほどには……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます