第59話 女神見習い、ギルド公認になる(4)


 「えーと、年会費は受け取ったし、口座も既に開設済み、紹介状もある……」


 メリンダさんは真剣に確認している。


 「はい。大丈夫そうですね。では、商業ギルドについて説明していきますね」

 「はい」

 「まず、ギルドカードについてですが……先程お預かりしたカードのこの部分に商業ギルドのマークがついたことでどちらのギルドでも使用可能になりました」


 おぉー。確かにさっきまでなかったマークがある。


 「これにより商業ギルドでも口座を使用できます」

 「はい」

 「商業ギルドの年会費は金貨1枚とかなり高額ですが、その分ギルド会員は手数料無料で素材の収集依頼を出すことも可能になったり特許などの申請も通常はかかる手数料が無料で申請することができます。そして融資の相談なども受け付けています……かなり審査はシビアですけど」

 「へえー……」


 ちなみに申請だけで手数料が銀貨1枚かかるらしい……申請が通らなくても返ってこないとのこと。

 特許の申請が10個以上通れば年会費の元が取れるってことか……まぁ、ギルド会員はタダみたいだし、ダメ元で出すのもありかな?


 「既にエナさんはロウトの特許を共同で取得しているようなので既にご承知でしょうが、特許の申請は同じようなものが既に無いかなど細かな審査がありますが、あまり使えそうになくても誰かに真似される前に登録するということが多いですね」


 ロウトの特許を共同で取得してるって今、初めて知ったんですけど。きっとサブサスの仕業だな……はあ。


 「そして、商業ギルドのランクは☆で表示され、だいたい☆~☆☆☆☆☆の間でランクが分けられ星の数が多いほど上位ランクとなります」


 つまりは星が多いほど冒険者ギルドでいう上位ランカーってことだね……


 「あー、さっきの人も星4つがどうのこうのって言ってました……そういう意味なんですね」


 いつのまにかいなくなったぽっちゃりおじさん……意外とランク上の人だったんだな。

 するとメリンダさんは苦虫を噛み潰したように顔をしかめて


 「ああいう輩は大体、親のランクを受け継いだお坊っちゃんが多いんです……星をかさにきて数年後にはランクが下がって惨めな思いをするんですよね」

 「そうですか」


 冒険者ギルドは実力がなくちゃ上位ランカーになれないけど、商業ギルドは一概にそうだとは言えないんだね。


 「ランク分けとしては評価や評判はもちろんのこと規模や事業内容により変化しますし、星1つより下はなくそれ以下と判断されれば商業ギルドの会員登録が解除されることも多々あります。その際は年会費は返却いたしませんのでご了承ください。ですが、ランクが上がれば年会費も安くなることもございます……年会費は保証金の役割も担っておりまして、何か問題が起きた時にそこから補填することができるような仕組みとなります」

 「星の多い人は信用も厚いから安くなることもあるということですね」

 「はい。ですが、ランクが高いからといってすべての人が対象になるわけではなく、ギルドで評判や業績をチェックし条件をクリアした人のみとなります」

 「へえ……」


 つまり、親の七光りはダメってことですね……分かります。


 「エナさんは現在星1つですが、商業ギルドに時々公認ポーションを卸していただければランクが下がるなどの問題は特に起きないと思います」

 「……ポーションを卸すだけで、評価になるんですか?」


 メリンダさんは少し乗り出し気味に……


 「はい! もちろんです。うちには冒険者ギルドとは違うルートがありますし、薬草なども依頼していただければ手配できることもありますので……」


 是非、売ってくれと顔に書いてありますね……


 「へえ、そうなんですね……じゃあ、時々売りに来ることにします」

 「お願いします。あとは施設についてですが……商談スペースなどは受付で使用時間を伝えお金を払えば借りることもできますし、ギルド内であれば契約などに職員が証人として立ち会うことも可能です。その他の依頼などもこちらの受付で行えますのでお気軽にどうぞ」

 「ありがとうございます」


 どうも、この街では商業ギルドで依頼した場合、至急をのぞいて1日に2度冒険者ギルドへ依頼をまとめて持って行ってくれるらしい……他の街では冒険者ギルドと商業ギルドの仲によるみたい。

 つまり、しっかり連携が取れているから出来ることなんだとか……例えば商業ギルドで護衛依頼を受け付けた場合、次の日には冒険者ギルドの掲示板に張り出されるんだって。といっても商業ギルドで依頼できるのは護衛募集、素材採取など……さすがに至急の場合は自分で直接冒険者ギルドへ行かなきゃいけないみたいだけどね。



 「ほかに何か気になることはございますか?」


 そうだ……一応薬包のこと聞いてみようかな。


 「ちなみに、ポーションを粉状にしたものって特許ありますか?」

 「少々、お待ちください」


 メリンダさんが調べている間、少し冷えてしまったお茶をいただく……あ、これ冒険者ギルドと同じやつだ。うまー。


 「お待たせいたしました。現在、そのような特許は申請されていませんね。ポーションは一般的に出回っているレシピのものは特許から除外されますが……自身が素材などを工夫して新たに作り出し、効果のあるものは特許申請ができます」

 「そうですか……じゃあダメ元で申請してもいいですか?」

 「はい……こちらが申請用紙となります」


 メリンダさんに渡された紙には特許名や作り方など細かく書き込む欄があった。


 ふむ、まずは特許名か……〈ポーションパウダー〉でいっか。


 次は作り方ねぇ……

 

-----


 ~ポーションパウダーの作り方~


 1.ポーションを作るときと同じように材料を鍋に入れ煮込んでいく。

 2.色が変化してきたら火からおろして調合を使う。

 3.さらに焦げないよう慎重に煮詰めていき水分がなくなったら日に当てずに乾燥させ、すりつぶして粉にする。

 4.出来上がった粉を紙で包み薬包が完成。


-----


 ま、こんなもんかな……もちろん女神の浄化とか加護は飛ばしたけど、粉にする方法は同じだから大丈夫。

 

 あとは製法を売るか、売上の1部をもらうかだけど……パウダーにする方法を売ることにした。その方が面倒くさくなさそうだったから……


 「エナさん、製法を売るならばその際の相手方との契約は法と契約の神の加護を受けた契約書を使用することをお勧めします」

 「法と契約の神の加護を受けた契約書って何ですか?」


 そういえばサブマスも神に誓う契約書とかなんとか言ってたような気が……


 「はい、契約にその用紙を使用すると法と契約の神に誓ったことになります。破った場合、違約金を払うか、違約金の支払いを拒否すると罰が下ります」


 罰は文字通りの天誅らしい……命は取られないけど結構すごいとか。その為、ほとんどの場合違約金で済ますらしい。


 「へえ、じゃあそうします」

 「製法はいくらで売りますか?」

 「うーん……」

 「そのうち、皆さん試行錯誤して自分の製法を生み出すでしょうから稼げるうちにふっかけるつもりでいいと思いますが……」


 結局、メリンダさんのアドバイスもあり銀貨3枚で製法を売り、契約書には他人に製法を漏らさないことが明記されるようにした。

 うん、そんな高いと売れないと思うけど……そもそも需要があるかわからないし、まあいいや。ダメ元だし……


 メリンダさんが備考欄に書き込んでいく。これで特許使用の際の契約書が法と契約の神の用紙を使うことを義務付けられたらしい。ただ、その用紙は高いので製法を売った時の1割がギルドに入ることになった。

 つまり、ポーションパウダーの製法が1回売れるごとに、わたしに銀貨2枚と小銀貨7枚入るってことだね。


 「こちらの特許料はすべて口座に入金するということでよろしいでしょうか?」

 「はい、お願いします」



 そわそわ……


 「あの……このお茶はどこで買えるんでしょうか?」

 「これですか……実はこれ、わたしの私物なんです。王都にいる妹が送ってくれたものなんですけど、いつのまにか主人がどこかに持って行くのでとられないよう職場に置いてるんです……」

 

 あ、その行方知ってます……


 「へ、へえ……美味しかったので気になってしまいました」

 「そうですよね。今、王都で人気のお茶なんだそうです。商業ギルドで掛け合って、もうすぐ少量ですが仕入れられるようになりそうなんです」

 

 うわー、それ欲しいなぁ……でも高いんだろなぁ。


 「エナさん、ここはひとつご提案なんですが……公認ポーションを月に1度10本程度こちらのギルドで売っていただけたらこのお茶を格安でお売りしますけど」

 「ぜひ、お願いしますっ」


 メリンダさんにまんまとはめられた気もするけど……月にポーション10本でいいなら安いものだよ。いやー、楽しみだなぁ。

 


 こうして1日にしてエナの存在が商業ギルドで有名になった。それが良い意味かは別として。


 ちなみに後日バッタリぽっちゃりおじさんに会ったらぷるぷるしてた。どうも、サブマスに何かしらのトラウマがあるらしい……うん、スルーしとくね。





◆ ◆ ◆ 



【ステータス】 

 種族:女神(見習い)/人族

 氏名:エナ・ハヅキ

 状態:通常

 体力:320/350

 魔力:51600/55300

 運:75

 冒険者ランク:C

 商業ランク:☆


 スキル 

 ・火属性魔法レベル2

 ・水属性魔法レベル3

 ・風属性魔法レベル3

 ・地属性魔法レベル3

 ・光属性魔法レベル3

 ・回復魔法レベル3

 ・状態異常無効レベル4

 ・接触防衛レベル2

 ・火属性耐性レベル2

 ・水属性耐性レベル2

 ・風属性耐性レベル2

 ・地属性耐性レベル2

 ・光属性耐性レベル2

 ・闇属性耐性レベル2

 ・体力自動回復(中)

 ・魔力自動回復(大)

 ・成長経験値上昇(大)

 ・精霊魔法 レベル2

 ・瞬間移動 レベル2

 ・料理レベル2

 ・栽培レベル3

 ・解体レベル1

 ・修繕レベル3

 ・世界地図レベル3


 特殊スキル

 ・女神の祝福レベル3

 ・女神の浄化レベル2

 ・女神の調合レベル2

 ・女神の心眼レベル3

 ・女神の聖域レベル3

 ・言語翻訳

 ・感謝ポイント〈25263ポイント〉累計〈28293ポイント〉


 ー称号ー

 巻き込まれし者・当選者・女神見習い・中堅冒険者・ギルド公認ポーション職人


 ー加護ー

 慈悲の女神フィラの加護・慈悲の女神の部下コルドの憐憫・大地神アルネルディの加護・愛の女神メルディーナの加護



 その他機能【交信】【履歴】



◆ ◆ ◆

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