第43話 女神見習い、呪われた少女と出会う(2)
朝起きると自室のテーブルの上にアルさんから贈り物が……神様ってみんなこうやってやりとりできるんだね……夜中にポンって物が置かれるのってミステリーだよね。
とにかく、一緒に置いてあった紙を確認する。
ふんふん……どうやら指輪をつけることで主従関係になって、安全に魔物と意思疎通ができるものみたい……でも、信頼関係がないとダメ……か
対となった指輪は自動的にサイズ調整されるようだ。リディアとブランのためのものかな……寝る前に結界を誰も出入りできないよう張り直したから逃げてないはず……なんかここだけ聞くと犯罪くさいな。
そーっと部屋をのぞくとブランはしっかり起きていたけどリディアはまだ寝てるみたい……ゆっくりさせてあげよう。
スープを温め直したり、水を足して味を調えていたら物音のせいかリディアが目を覚ましたようだ。
「あ、ごめんね……起こしちゃった?」
「……ううん、眠り浅い……から」
「そっか……とりあえず朝ごはん食べてから話そうね」
「でも……」
ブランに促されるように席に着いた少女の前にスープとパン、オレンジを置く……
パンは買っておいたものだし、スープは会心の出来だから問題あるまい!
「それで……呪いのことなんだけど……」
「……すぐ出てくから」
「いや、そうじゃなくて……リディアは呪いについてどのくらい知ってるのかな?」
「……教会ではどうにもならない呪いってこととあれが出ると周りの人の具合が悪くなること」
「そっか……あのね、その呪いは忘我の呪いっていうみたいで、昨日リディアが寝てる時に魔法をかけてみたのね……そしたら数値がちょっと減ったみたいなの」
「……減った?」
「ああ、ごめん。私ステータスも確認できるんだよね」
「……ん」
「でも1日に1度しか効果がないみたいで、ちょっと確認させてほしいんだけど」
「……ん、わかった」
女神の浄化をかけると……やはり数値が100減っていた。
「うん、やっぱり効果があるね」
「ほんと?……わたしふつうに暮らせるようになるの?」
「うん……時間はかかるけどいつかは……だからしばらくここで暮らしたらいいよ……でもね、もしここで暮らすならこれを付けてもらわないといけないの」
ひとりきりの空間は個室があるし……それになんだかほっとけない。
アルさんが帰ってから少し寂しかったのもあるんだけど。
うす紫の石がついた指輪を机の上に置く。
「ブランと意思疎通ができるようになる指輪なんだけど、つけることによって主従関係とみなされるの……これがあれば街でブランといても平気なんだって」
「ブランと……」
ブランは指輪を前にソワソワして、早く付けたいみたい。すこし悩んだ後、ブランの様子を見て……
「……ん、わかった。よろしくお願いします」
結局、指輪はブランの首に自動調節され、首輪になった。
これにより2人の間で簡単な意思を伝えることができるようになったみたい。アルさんの指輪すごいね。
「うん、よろしく。リディア」
「……リディでいい」
「わかった。リディとブランはさっきの部屋を使ってね?」
「……いいの?」
「もちろん!」
自分の部屋がもらえることが信じられないようだ……あ、ブランが説得してるっぽい。言葉はわからないけど仕草がそんな感じ。
「ありがとう」
「いーえ……そういえばリディは何歳なのかな?」
見た目だけならミーナちゃんより1、2歳上くらいかな?
「……ん、多分12歳」
「え……」
やばい、栄養が足りてないせいで成長が……
「そう、わかった。これからたくさんご飯食べるんだよ」
「……? うん……」
いやー、これ頑張って料理スキルを上げるかミーナちゃんのお父さんにお願いして栄養たっぷりのご飯分けてもらわないと!
「うん、落ち着いてくれたなら……まず、お風呂入ろうか……ブランもね?」
「お風呂?」
あれ、お風呂知らない感じ?
「そう、お風呂っていうのはあったかいお湯に入って汗や汚れを落とすことのできる小さな部屋かな」
「……すごい」
大丈夫、簡易シャワーから持ち出したシャンプーやボディーソープもあるし、何回か洗えば頑固な汚れも綺麗になるはず。
お風呂に入ったことで見違えるほど綺麗になったリディは、艶やかな黒髪にルビーのような赤い瞳をしていて顔立ちが整った美少女だった。表情が乏しいせいでお人形さながら……
ブランもくすんでいた白が真っ白に変化した。
「おおー、見違えたね……服は、どうしようか」
元々リディが身につけていたのはボロボロの服と小さなショルダー。
着ていた服はボロボロで穴があいて汚れている……これをまた着せる気にはなれない。
ショルダーには大切なものが入ってるみたいだから、仕分け用の袋をひとつ渡すことにして、服は市民の服を着てもらう……ダボダボだ。着替えている間にベットに《
「ごめん、今これしかないから動きにくいかもしれないけど」
「……いい、ありがと」
今度買いに行きたいけど……街とか嫌がるかもしれないな……まぁ、その時はミーナちゃんのお母さんにおすすめの服屋さんを教えてもらって1人で行こう。私の趣味全開のものにしてしまいそう……
「えーと、一応この家の場所から……魔の森の奥深くにあります。台所はほぼポーション作りにしか使ってないからリディが使いたいときに使ってね……あ、でも火には要注意だよ?」
「……ん」
ブランが任せろとばかりに飛び回っている。
「お風呂やトイレの使い方は教えたし……アルさんのおかげで部屋にランプもあるし……あと家と畑の周囲に結界があって魔物とかは入れないようになってます」
「……ん……ブランは?」
「あー、害意のあるもの限定だからブランは除外かな? リディはこの森を生き抜いてきたから大丈夫だと思うけど、結界の外は危険な魔物もいるから気をつけてほしい……何かあったら結界の中に急いで戻ること。多少の攻撃には耐えられるからね」
「……ん」
「リディには畑の水やりをお願いしたいの……井戸はないから台所から持っていくか魔法で出すことになるけど平気?」
「……ん、がんばる」
何もせずにいるよりいいと思うんだよね……必要とされるって嬉しいでしょ。
「あと、数日に1回……街に買い出しやポーションを売りに行ってるの……その時に服も買ってこようと思うけど……いつか一緒に行こうね」
「……でも、この髪と瞳だとみんなに嫌われちゃう。それにあれも出ちゃうから……」
あら、早速瘴気が漂い始めた。
「うん、今すぐじゃないから……焦らずゆっくりでいいからね」
「……ん……」
あ、引っ込んだ。しばらくはブランとお留守番してもらおう……
それにしてもブランは状態異常耐性があるから瘴気のそばにいても平気なのかな……
こうして、2人と1羽の生活が始まった。
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