第二札 生者の思いと死者の想い

まえがき

この洋館に住む利剣とサキの心温まる出会い。

それは月の綺麗な夜だった。

時間は深夜二時。

トイレに向かう為廊下を歩いていると、奥に人影が見える。

窓から入る月明かりに照らされた黒髪の女性。

月を眺める女性がとても綺麗で……。

それはまるでこの世に存在していないかのような……

「って本当に存在してねえ! 幽霊かよぉぉ!」

パニックになる利剣を見て、最初は驚いたサキだったが利剣のチキンっぷりを見て大笑いするサキだった。

「いや、全然心温まってねえから」

「温かくなる体も無いしねっ」














 家政婦メイドを募集する。


 そう宣言してから一週間が過ぎた。

 思い立ったが吉日という事ですぐにスマホ検索、目に付いた公告会社に連絡を取って新聞に挟まれている求人募集の1枠を買った。


 ☆初心者・未経験者大歓迎!

 ☆家事の出来る人急募!

 ☆アットホームで落ちついた職場です♪

 ☆住み込み可!(その場合はお部屋も個室です)

 ☆給与・勤務時間は応相談!高収入も夢じゃない!

 ※告知事項有


 ……最後の一文で一気に事故物件じこぶっけん感が出たよ!

 

「住み込み可って……この家で性犯罪せいはんざいを犯さないでよね……」


 募集内容の原案を見たサキが、眉根を寄せて心底嫌そうな目で俺を睨む。

 メイドさんは男のロマンだがさすがに犯罪行為はしねえよ。

 多分……いや絶対にだっ!!

 広告が新聞に挟まれるのは今日明日ぐらいのはず。

 後は面接希望の電話が入る事を願うばかりだ。

 なんて事を考えながら自分で焼いたパンを一口かじり、カフェオレで流し込んだ。


美味おいしそうだね……」


 いつからそこにいたのか、俺の背後をふよふよとただようサキ。

 俺はニヤリと笑ってトーストをサキの鼻先に突き出してやる。


「食うか?」

「利剣がかじったのなんて汚いからいらない」

「おまっ……! そこは幽霊だから食べれないよぉ、とかだろ!?」

「汚いからいらない」

「くっ……」


 思春期の女の子って皆こんな面倒くさくて腹立たしいのか?

 お父さん泣いちゃうよ?

 って俺だって20歳だからサキとそんなに年齢変わらねえよ?


「そういやサキ。あれから何か思い出したとか、進展はないのか?」

「うーん、特には……。この館を出ようとすると嫌な気持ち? 気配? になる位」


 幽霊に「嫌な気持ち」、「気配とか感じる」とかあるんだなぁ……。


「サキは地縛霊じばくれいって事か?」

「そんな事わかんないよ……」

「早く極楽へ行けたらいいな」

「……どうなんだろ……。成仏したいとか思わないんだけど……」

「可能なら家政婦かせいふさんが仕事に来てくれるまでには成仏してくれたら悩みが減るんだけど」

「ひどぉ!!」


 サキが回し蹴りが放たれ、当たる事なく俺の頭をすり抜けた時。


 ……ピルルルル!


「お? おぉ!?」


 待ち望んだコール音。

 俺は急いで通話ボタンをタップする。


「もしもし逢沢利剣おうさわりけんです。あ、はい……はい……」


 通話をする利剣の様子を、サキは面白くなさそうな顔つきで眺めていた。




 ―――サキside―――




「ちぇー……サキの家なのにさぁ……」


 食堂を離れたサキは二階の廊下をゆったりと浮かんでる。

 確かにサキは死んでるし、記憶も全然なくって……。

 ここがサキの家だーって事くらいしか覚えてないけどさ……。

 次々と人を増やすのはなんか、納得できないや。

 近くの町とか景色を見たら何か思い出すかも、って思ったけど屋敷を離れたら何か、ゾワゾワ? ゾクゾク? 良い気分がしないの。

 だから屋敷と庭をぶらぶらはしてるけど……何の手がかりもない。


 利剣はなんだかんだで良い奴なんだと思う。

 サキの事、はらわないでいてくれるし、話相手にもなってくれる。

 何を言っても何をしても本気で怒ったり嫌ったりしない。

 って言っても物に触れないんだけどね。

 サキは寝なくても平気だけど利剣そうじゃないから夜は話しかけないようにしてる。

 ……最初の二日間は話相手がいて嬉しかったのと寂しかったので夜中じゅう話しかけちゃったけど。


 翌朝スマホでおきょうを自動で読むアプリをダウンロードしてたなぁ~。

 サキに全く効果が無くて絶望してたけど。

 あの顔は面白かった!


「新しい人、かぁ……」


 大丈夫なのかな?

 サキの事、攻撃したり襲ったりして来ないかな?

 それとも、姿を見て逃げちゃうかなぁ……。


「なんか……ヤだな……」


 外はいい天気ですごく明るいのに、サキの気分はどんより曇り空だよ……。







あとがき

矛盾が生まれたりしないように色々と考えてはいますが

おかしな点や変な所があるとは思います。

アドバイスやご指摘、ありましたらぜひ、ぜひっ……。

それが生きる力となりますので…(瀕死)

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