第15話 友だち第一号。

ジャン王子は、どこか不貞腐れた様子で庭の隅にある噴水に腰掛けていた。


「ジャン王子、お隣よろしいですか?」


「なんで来たんだよ」


「キース王子に頼まれたのです。私とジャン王子が、同い年だから、と」


「……そうか」


しょんぼりと肩を落とすジャン王子は、きっと素直で良い子なのだろう。


本当は、エドワード王子にもあんな態度を取りたくないのではなかろうか。

ただ、コンプレックスが邪魔をしているだけで。


……まぁ、そんなことは別にどうでもいい。

王子たちの仲が悪かろうが、良かろうが、私には関係ない。

むしろ、コンプレックスを抱えたまま成長する方が関係性としては好みである。


「ところで、ジャン王子」


私の言葉にびくりと肩を揺らすジャン王子。

怒られるか、慰められるか、とでも思っているのだろう。


「な、何だ……」


「恐れ多いことではありますが、同い年ということでもありますし、私と友だちになってはいただけませんか?」


「友だち?」


「ええ。ですが、安心してください。ジャン王子の婚約者になろうという下心のある話ではございませんから」


そろそろひとり遊びも飽きてきたのです。


「したごごろ? とは、よく分からないけど……。エドワードお兄様やキースお兄様じゃなくて、僕でいいの?」


不安そうな顔のジャン王子。

素顔が少しだけ見えている。

ああ、何だかイケナイ扉を開いてしまいそう。


「え、ええ。ジャン王子が良いのです」


「……そっか、僕がいいのか」


えへへ、と嬉しそうに笑うジャン王子はとても可愛らしい。



これが、後に悪友となるジャンとの出会いであった。

そして、セシリア本人も知らないジャン王子の長い長い初恋の始まりでもあったのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る